著者
野口 芳子
出版者
梅花女子大学・大学院児童文学会
雑誌
梅花児童文学 = The Baika Journal of Children’s Literature (ISSN:13403192)
巻号頁・発行日
no.29, pp.19-33, 2022-03-15

明治期から大正期の間にこの話の邦訳は合計7 話出版されている。そのうちドイツ語から訳されたものは2 話、英語訳からは3 話、ロシア語訳からは1 話、底本が不明のものは1 話である。改変箇所は英語訳の影響を受けたものが多く、ドイツ語原典に忠実な訳は1 話しか存在しない。小人の名前については、ドイツ語の名前を使っているものが2 話、ロシア語の名前が1 話、日本語の名前が4 話ある。名前を当てられた小人は最後の場面で体を引き裂くのではなく、片足で跳んで逃\げると改変されているものが多い。これは底本に使用された英語訳に施された改変である。日本人訳者によって行われた改変は、生まれた赤子の性別を男性にしたことである。ドイツ語の原典では「最初に生まれた子」としか表現されていないのに、多くの日本語訳では「王子」にされている。1873 年の太政官布告263 号で貴族や華族に対して長男の家督相続が日本史上初めて法的に明確化された。そのような日本の社会状況がおそらく改変に反映されたのであろう。

言及状況

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9. グリム童話「ルンペルシュティルツヒェン」の明治期から大正期の翻訳 (『梅花児童文学』29号(2022年)より) https://t.co/eTsCQZcjRl 名前を当てられると力を失う小人の童話『ルンペルシュティルツヒェン』の 明治、大正期の日本語訳を、底本と比較しつつ 改変されている点や理由を考察した論文。

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