- 著者
-
山田 厳子
- 出版者
- 国立歴史民俗博物館
- 雑誌
- 国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
- 巻号頁・発行日
- vol.54, pp.267-294, 1993-11-10
通常とは違った特徴を持つ子どもが生まれることは民俗社会の中では歓迎されざることであった。そのことは、民俗社会の中で語られるさまざまな話の中からもうかがうことができる。しかしこのような子どもが却って富をもたらすと説明する話もある。ここでは現実との関わりによって語られる、しかも事実そのものとはいえない話(世間話)を例として検討しながら通常とは違う子どもに対する「過剰な意味づけ」を問うていきたいと考えている。「歓迎される」異常児として「福子」が、「忌避される」異常児として「鬼子」が挙げられる。「福子」には自身を犠牲にして「家」の繁栄をもたらすイメージがある。一方「鬼子」には「富」とともに「他界」からもたらされるイメージと、歓待されることによって「富」をもたらすイメージがある。異常児が、富とともに他界からもたらされるというイメージは、異常児の去来によって家の盛衰が決定されるという話へとつながるであろう。また異常児の誕生という不幸によって「富」の獲得という幸福とのバランスをとろうとする家の外部の者の心意もうかがうことができる。子どもの「異常」の説明のために「富」の推移が語られ、家の盛衰の説明のために「異常児」の誕生が語られたことが推測される。その際に「異常児」は家の盛衰と密接に結びついた霊的な存在と受け取られていたといえるであろう。