著者
鈴木 卓治
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.206, pp.39-59, 2017-03-31

国立歴史民俗博物館が開催する企画展示「万年筆の生活誌―筆記の近代―」(2016年3月8日(火)~5月8日(日))のために,館蔵資料43点を含む58点の蒔絵万年筆資料のマルチアングル画像を撮影し,展開図を作成した。本稿では,資料への負荷を抑えつつ図録掲載等の要求に耐える品質を有する展開図画像を得るための,万年筆資料のマルチアングル画像撮影ならびに展開図作成の技術開発について述べる。スリットカメラの原理に基づき,万年筆を一定角度で回転してマルチアングル画像を撮影するための専用の治具を制作した。マルチアングル画像からの展開図画像の作成について,万年筆の回転角と得られる展開図画像の誤差との関係について検討し,5度刻みのマルチアングル画像から,μm単位の誤差の展開図画像を作成できることを示した。展開図画像の作成にあたって,万年筆の太さは均一でないので画像の幅が必ずしも回転角に比例せず,単純に一定の幅で切り出した画像を合成したのでは重複や欠損を生じる。そこで簡単な画像処理によって万年筆の太さを求め,幅が回転角に一致する補正画像を生成したところ,重複や欠損のない画像を得ることができた。また,クリップのようにまわりから著しく飛び出している部分があると,画像から正確に半径を求められない部位が生じ画像が乱れる問題について,クリップの位置をマスク画像で与えることによって解決を図った。本稿で述べる展開図作成の技術は,類似の資料のデジタル化の促進に寄与することができよう。

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@FET_SHIZAIBU ああ,やはり,あの方が...どうもありがとうございました.万年筆の撮影方法と作成したデータについてはこちらの論文にまとめました.これより精密な撮影はカメラと回転ステージを連動させて全自動化する必要が,しかし自作回転ステージでは精度が足りないだろうとか字数 https://t.co/tTgf0KzxUm
蒔絵万年筆の全周画像を撮影して展開図を作る方法を書いた論文がリポジトリに上がってネットで読めるようになりました. https://t.co/3PnU4o3bkT

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