著者
鈴木 卓治 五島敏芳 牟田昌平
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.8(2008-CH-077), pp.25-26, 2008-01-25

情報処理学会人文科学とコンピュータ研究会において「デジタルアーカイブ」が重要な研究テーマのひとつにとりあげられるようになって久しい.デジタル技術の発達は目覚しく,「ボーンデジタル」な資料(他の媒体上で作られた資料のデジタルコピーでない,最初からデジタルデータとして作られた資料)の急速な台頭や,「Google≒デジタルアーカイブ」という視点の登場など,早くからアーカイブズとデジタル技術の問題に強い関心を寄せていた当研究会としては,この潮流を正確に把握して,デジタルアーカイブ研究をどの方向に発展させていくべきかについて,よく学ぶ必要がある.われわれは,アーカイブズの専門家を招いて,アーカイブズとデジタル技術にまつわる最新の状況と課題について理解を深めることを目的とする「アーカイブズ小特集」を全2回の予定で開催することとした.本稿は,その第1回として,国立公文書館の牟田昌平氏を招いて実施する,公文書のデジタルアーカイビングの現状と未来を探るパネル討論についての予稿である.
著者
鈴木 卓治
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.206, pp.39-59, 2017-03-31

国立歴史民俗博物館が開催する企画展示「万年筆の生活誌―筆記の近代―」(2016年3月8日(火)~5月8日(日))のために,館蔵資料43点を含む58点の蒔絵万年筆資料のマルチアングル画像を撮影し,展開図を作成した。本稿では,資料への負荷を抑えつつ図録掲載等の要求に耐える品質を有する展開図画像を得るための,万年筆資料のマルチアングル画像撮影ならびに展開図作成の技術開発について述べる。スリットカメラの原理に基づき,万年筆を一定角度で回転してマルチアングル画像を撮影するための専用の治具を制作した。マルチアングル画像からの展開図画像の作成について,万年筆の回転角と得られる展開図画像の誤差との関係について検討し,5度刻みのマルチアングル画像から,μm単位の誤差の展開図画像を作成できることを示した。展開図画像の作成にあたって,万年筆の太さは均一でないので画像の幅が必ずしも回転角に比例せず,単純に一定の幅で切り出した画像を合成したのでは重複や欠損を生じる。そこで簡単な画像処理によって万年筆の太さを求め,幅が回転角に一致する補正画像を生成したところ,重複や欠損のない画像を得ることができた。また,クリップのようにまわりから著しく飛び出している部分があると,画像から正確に半径を求められない部位が生じ画像が乱れる問題について,クリップの位置をマスク画像で与えることによって解決を図った。本稿で述べる展開図作成の技術は,類似の資料のデジタル化の促進に寄与することができよう。
著者
曽我 麻佐子 鈴木 卓治
雑誌
じんもんこん2018論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, pp.315-320, 2018-11-24

蒔絵万年筆は,照明などの光や湿度によって劣化するものがあり,恒常的な展示に適さない.また,細かい柄等が肉眼で見えにくいといった問題もある.本研究では,博物館の来館者に蒔絵万年筆をより細かいところまで自由に鑑賞してもらうことを目的として,HMD とペン型デバイスを用いた万年筆の展示支援システムを開発した.本システムでは,HMD 用いてVR 空間に表示した万年筆の3DCG を,ペン型デバイスで操作して鑑賞することができる.直感的に万年筆を操作するために,ペン型デバイスに搭載したジャイロセンサから検出した角速度をもとに,万年筆の3DCG を回転させている.また,HMD を装着した状態で複数の万年筆から一つを選んで簡単に切替えられるようにするため,HMD の画面の中心にカーソルを表示することで,頭の動きのみで鑑賞する万年筆を選択することが可能である.開発したシステムは,国立歴史民俗博物館の企画展において8 週間運用した.来館者の評価により,本システムのコンセプトの有用性を確認した.
著者
渡辺 晃宏 馬場 基 市 大樹 山田 奨治 中川 正樹 柴山 守 山本 崇 鈴木 卓治
出版者
独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2003

奈良文化財研究所では、1961年に平城宮跡で初めて木簡を発掘調査して以来、20万点を超える木簡を調査・研究してきた。今回の研究では、この蓄積と、文字認識や情報処理に関する最新の情報学・情報工学との連携を図り、(1)木簡の情報を簡易にデジタル化するシステムの開発、(2)木簡の文字画像データベースの作成、(3)木簡解読支援データベース群の構築、(4)木簡の文字自動認識システム(OCR)の開発の4点を軸に研究を進め、木簡の文字画像データベース「木簡字典」と、木簡の文字解読支援システム「Mokkan Shop」(モッカンショップ)を開発した。「木簡字典」には、カラー・モノクロ・赤外線写真・記帳ノート(木簡の読み取り記録)の4種類の画像を掲載しており、これまでに約1,200字種、約20,000文字を収録した。「Mokkan Shop」には、今回開発した墨の部分を抽出するための画像処理手法や欠損文字に有効な文字認識システム、及び今回入力した古代の地名・人名・物品名のデータベースに基づく文脈処理モジュールを搭載し、解読の有効性を高めることができた。これにより、全体が残るとは限らない、また劣化の著しい、いわば不完全な状態にあるのを特徴とする木簡を対象とする、画期的な文字の自動認識システムの実用化に成功した。「木簡字典」と「Mokkan Shop」は、木簡など出土文字資料の総合的研究拠点構築のための有力なツールであり、当該史料の研究だけでなく、歴史学・史料学の研究を大きく前進させることが期待される。なお、今回の研究成果の公開を含めて木簡に関する情報を広く共有するために総合情報サイト「木簡ひろば」を奈良文化財研究所のホームページ上に開設した。また、WEB公開する木簡字典とは別に、『平城宮木簡』所収木簡を対象とした印刷版「木簡字典」として、『日本古代木簡字典』を刊行した。
著者
鈴木 卓治 安達 文夫 小林 光夫
雑誌
じんもんこん2000論文集
巻号頁・発行日
vol.2000, no.17, pp.25-32, 2000-12-15

本稿では,博物館の視点から「デジタルアーカイブは構築できるか」を考察する.デジタルデータの記録・復元,蓄積・保存,活用の3つの段階に分けて議論する.はじめに,デジタルアーカイブに関する国内外の状況を述べる.つぎに,デジタルアーカイブの技術的問題について論じ,国立歴史民俗博物館における3つの事例を通じ,博物館におけるデジタルアーカイブ活用の方向性を示す.最後に今後の課題を述べ,提言を行なう.
著者
鈴木 卓治 五島敏芳 牟田昌平
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.8, pp.25-26, 2008-01-25

情報処理学会人文科学とコンピュータ研究会において「デジタルアーカイブ」が重要な研究テーマのひとつにとりあげられるようになって久しい.デジタル技術の発達は目覚しく,「ボーンデジタル」な資料(他の媒体上で作られた資料のデジタルコピーでない,最初からデジタルデータとして作られた資料)の急速な台頭や,「Google≒デジタルアーカイブ」という視点の登場など,早くからアーカイブズとデジタル技術の問題に強い関心を寄せていた当研究会としては,この潮流を正確に把握して,デジタルアーカイブ研究をどの方向に発展させていくべきかについて,よく学ぶ必要がある.われわれは,アーカイブズの専門家を招いて,アーカイブズとデジタル技術にまつわる最新の状況と課題について理解を深めることを目的とする「アーカイブズ小特集」を全2回の予定で開催することとした.本稿は,その第1回として,国立公文書館の牟田昌平氏を招いて実施する,公文書のデジタルアーカイビングの現状と未来を探るパネル討論についての予稿である.This is a preliminary report of the 1st panel discussion titled "How will digital archives develop in the future?" Studying the current state and the future of digital archiving of various kinds of materials is very interesting and important task for our SIG. Two panel discussions of this problem are planned. Some archivists will be invited as panelists of the discussion. This panel discussion discusses the problem of digital archiving of the government documents. We will know the latest, correct information about relationship between "true archives" and digital technology by the discussion.
著者
鈴木 卓治 五島敏芳
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.73, pp.39-40, 2008-07-18

本稿は,アーカイブズの専門家を招いて,アーカイブズとデジタル技術にまつわる最新の状況と課題について理解を深めることを目的とするアーカイブズ小特集 「アーカイブズとデジタル技術の未来を考える」 (全 2 回)における第 2 回パネル討論 「アーカイブズの概念とデジタルアーカイブ」 についての予稿である.アーカイブズの理論的な存在根拠である 「永久保存」 の概念を正しく理解し,アーカイブズとしてのデジタルアーカイブの確立のための必要要件を知ることが今回の目的である.This is a preliminary report of the 2nd panel discussion titled "How will digital archives develop in the future?" In this discussion, we try to study and understand the concept of permanent (archival) value of data on the archives. It is essential ability for future digital archivists to construct "true" digital archives.