著者
松橋 崇史
出版者
拓殖大学経営経理研究所
雑誌
拓殖大学経営経理研究 = Takushoku University research in management and accounting (ISSN:13490281)
巻号頁・発行日
vol.117, pp.75-88, 2020-03-26

本研究の目的は,株式会社広島東洋カープと広島市,株式会社楽天野球団と宮城県・仙台市の連携を対象に,各地方公共団体がどのような制度整備を行い,そのことが球団経営や地域経済に与えた影響について明らかにすることである。本研究では,民間事業者が中心となって地域活性化等に波及効果を生み出す「地域イノベーション」と,民間事業者の新たな価値の創造実現を可能にする公的な条例や規則の制定や改正,その運用としての「政策イノベーション」の相互作用という分析枠組みを仮説的に設定し,両事例における球団と自治体の関係を分析することにする。両球団,および,宮城県,仙台市,広島市の関係者に対するヒアリング調査および文献調査から次のことが明らかになった。まず,両球団は自治体との間に連携協定を結び,自治体が有するスタジアムの管理者として,既存の制度的制約にとらわれない球場管理/経営を行っている。例えば,球団による球場の改修等が可能になり,飲食物販や球場内のスポンサーからの売り上げの多くを球団が得ることが可能になった。2010 年代に入ってからの両球団の経営的成功は自治体との間に結んだ連携協定に大きな影響を受けていることが明らかとなった。地元地域においても年間200 万人前後の誘客力を持つ球団によって雇用効果,経済効果がもたらされ,球場周辺の都市開発が進む現状も生じた。本論で用いた分析枠組みは,他球団や他種目の事例に適応しながら分析を行い,「地域イノベーション」と「社会イノベーション」の関係をパターン化していくことが求められる。

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