著者
武田 康祐
出版者
拓殖大学経営経理研究所
雑誌
拓殖大学経営経理研究 = Takushoku University research in management and accounting (ISSN:13490281)
巻号頁・発行日
vol.112, pp.105-118, 2018-03-28

安倍内閣では,人口減少,少子高齢化に真正面から立ち向かうという強い決意の下に,「一億総活躍社会」の実現を最重要課題に掲げている。その最大のチャレンジとして位置づけられたのが「働き方改革」である。働き方改革については,総理が議長,労使のトップを含む有識者からなる「働き方改革実現会議」を開催し,議論を積み重ね,合意形成した「働き方改革実行計画」を決定した。「働き方改革実行計画」においては,同一労働同一賃金の実現に向け,正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で,待遇差が存在する場合に,いかなる待遇差が不合理なものであり,いかなる待遇差が不合理なものでないかを示す政府のガイドライン案を示すとともに,ガイドライン案の実効性を担保するため,裁判で救済を受けることができるようにするための法改正の方向性を示している。また,長時間労働の是正として,経団連及び連合による労使合意を踏まえ,従来,上限なく時間外労働が可能となっていた臨時的な特別の事情がある場合として労使が合意した場合であっても,上回ることができない罰則付きの上限を設定することとしている。その他,テレワークや副業・兼業など柔軟な働き方がしやすい環境整備,女性・若者の人材育成など活躍しやすい環境整備,病気の治療と仕事の両立など,その他の課題についてもその方向性を示している。その後,労働政策審議会で法律案要綱が答申され,厚生労働省としては法案の国会提出を目指している。
著者
三代川 正秀
出版者
拓殖大学経営経理研究所
雑誌
拓殖大学経営経理研究 = Takushoku University research in management and accounting (ISSN:13490281)
巻号頁・発行日
vol.115, pp.131-146, 2019-03-27

国立民族学博物館の「会計学と人類学の融合」共同研究会に招かれ,持論の「辺境会計」について報告する機会(2018年2月25日)があった。その折のレジュメ「辺境会計の覚書」に加筆・訂正したものが本稿である。日頃「何故」を問いながら原稿用紙のマス目を埋めてきたので,研究会では,研究対象としてきた「何故」の史的考察を,簿記技法,家計簿記,アカウンタビリティ,重要性の判断,信託法理,取締役報告書,営業報告書(事業報告),環境会計,幸福論を通じて「会計は学問たりうるか」を問って,これを報告した。また2012年と翌3年の二度に渡ってソウルにある国立韓国学中央研究院(AKS)の要請があって,韓・中・日の三か国の土着簿記共同研究会に参画し,この国に育った「帳合の生成とその終焉」を報告してきた。上記の二つの研究機関が求めていたのは,はからずも自国の文化(人類学)と近代(会計)科学の絡みを究めることであった。まさに社会科学の在りようを模索していたのである。そこで,これまでの拙い研究態様を会計学徒に詳らかにし,ご批判を仰ぐものである。
著者
松橋 崇史
出版者
拓殖大学経営経理研究所
雑誌
拓殖大学経営経理研究 = Takushoku University research in management and accounting (ISSN:13490281)
巻号頁・発行日
vol.117, pp.75-88, 2020-03-26

本研究の目的は,株式会社広島東洋カープと広島市,株式会社楽天野球団と宮城県・仙台市の連携を対象に,各地方公共団体がどのような制度整備を行い,そのことが球団経営や地域経済に与えた影響について明らかにすることである。本研究では,民間事業者が中心となって地域活性化等に波及効果を生み出す「地域イノベーション」と,民間事業者の新たな価値の創造実現を可能にする公的な条例や規則の制定や改正,その運用としての「政策イノベーション」の相互作用という分析枠組みを仮説的に設定し,両事例における球団と自治体の関係を分析することにする。両球団,および,宮城県,仙台市,広島市の関係者に対するヒアリング調査および文献調査から次のことが明らかになった。まず,両球団は自治体との間に連携協定を結び,自治体が有するスタジアムの管理者として,既存の制度的制約にとらわれない球場管理/経営を行っている。例えば,球団による球場の改修等が可能になり,飲食物販や球場内のスポンサーからの売り上げの多くを球団が得ることが可能になった。2010 年代に入ってからの両球団の経営的成功は自治体との間に結んだ連携協定に大きな影響を受けていることが明らかとなった。地元地域においても年間200 万人前後の誘客力を持つ球団によって雇用効果,経済効果がもたらされ,球場周辺の都市開発が進む現状も生じた。本論で用いた分析枠組みは,他球団や他種目の事例に適応しながら分析を行い,「地域イノベーション」と「社会イノベーション」の関係をパターン化していくことが求められる。
著者
宮川 昭義
出版者
拓殖大学経営経理研究所
雑誌
拓殖大学経営経理研究 = Takushoku University research in management and accounting (ISSN:13490281)
巻号頁・発行日
vol.111, pp.265-278, 2018-02-28

本稿では,まず,いわゆる取得原価会計および公正価値会計が,会計理論としての完全性を提供するものではなく,企業の業績指標としての利益計算構造を当期純利益とするのか包括利益とするのかいずれが適当であるかを考える主観的なアプローチの違いに過ぎないことを指摘する。したがって,前者は取得原価主義会計であり,後者は公正価値主義会計であり,それぞれの利益観自体に優劣があるわけではないことを明らかにしている。その論拠として,取得原価主義会計から見るクリーン・サープラスが,公正価値主義会計では達成されないとの批判について,ゴーイング・コンサーンを前提とする取得原価主義会計による期間損益の総和が,名目資本維持を前提とする限り全体損益と一致せず,当該期間損益には業績損益と評価損益が混在していることを明らかとしている。つまり,クリーン・サープラスそれ自身にも公正価値主義会計における包括利益的要素が含まれているのである。結果として,「包括利益」と呼称するかぎり,それは一意の利益ではなく,「その他包括利益」をリサイクリングするかどうかが今日の会計観が取得原価主義会計に依拠しているか,公正価値主義会計に依拠しているかの判断基準となることを理論分析している。公正価値主義会計において,リサイクリングを採用することは,公正価値主義会計そのものが取得原価主義会計の範囲に引きつけられていることを明らかとしている。
著者
庄司 真人
出版者
拓殖大学経営経理研究所
雑誌
拓殖大学経営経理研究 = Takushoku University research in management and accounting (ISSN:13490281)
巻号頁・発行日
vol.112, pp.91-104, 2018-03-28

ソーシャルメディアの出現によって,従来の企業と顧客との関係に大きな変化が現れてきている。情報が企業から顧客に提供されるだけでなく,顧客から企業あるいは顧客間といったことが容易に行われるようになることで,顧客からの情報発信が無視できなくなってきた。さらに商品を消費だけの存在として捉える従来の顧客像は,特にソーシャルメディアの発展によって転換が求められてきている。自らが発言し,体験を共有することを行う顧客は,価値共創のパートナーとして捉えるべきものとなる。本稿では,これらの問題意識を踏まえ,消費者行動論,S-D ロジック,そして顧客満足・ロイヤルティ研究を検討することによって,顧客エンゲージメント研究の意義を考察する。さらに,既存研究の問題点を提示することで今後の方向性について示す。
著者
建部 宏明
出版者
拓殖大学経営経理研究所
雑誌
拓殖大学経営経理研究 = Takushoku University research in management and accounting (ISSN:13490281)
巻号頁・発行日
no.111, pp.87-105, 2018-02-28

過去の一連の拙稿において,海軍工廠の原価計算規程を考察対象としてきた。とりわけ「海軍工作庁における会計」では,海軍工廠,航空廠,技術研究所,火薬廠,各要港部工作部などを統括し,海軍に所属する艦船や兵器の造修,実験,研究を掌る海軍工作庁における会計システムの全体像を明らかにした。明治22 年「会計法」の施行後,海軍の作業場の会計は,材料資金を除いて特別会計から一般会計となった。その後,火薬廠,燃料廠は,特別会計とされた。燃料は海軍にとって最も重要な軍需物資であり,創設当時から燃料廠の整備が行われた。これまで,印刷工場,海軍工廠,鉄道工場の各会計を瞥見してきたので,海軍燃料廠の会計システムも明らかにしておきたい。本稿では,『海軍燃料廠作業會計ノ梗概』に基づいて,海軍燃料廠の会計を特別会計と原価計算の側面から考察する。
著者
三代川 正秀
出版者
拓殖大学経営経理研究所
雑誌
拓殖大学経営経理研究 = Takushoku University research in management and accounting (ISSN:13490281)
巻号頁・発行日
vol.110, pp.5-36, 2018-01-31

台湾協会,後の東洋協会は明治30(1897)年に国の植民政策を支援する民間団体(台湾会)として立ち上がり,終戦を迎える昭和20(1945)年まで,邦人居留民と現地住民子女のために植民各地に実業学校を設けてきた。明治33(1900)年設立の台湾協会学校(のちの拓殖大学)開校の10年後の明治43(1910)年に旅順語学校と大連商業学校を,大正6(1917)年には台北市内に台湾商工学校を,そして昭和8(1933)年には奉天商業学校と僅か二十三年の間に四校を開校した。台湾協会学校もまた明治40年に海外分校を京城(のちに高等商業学校として独立)に,さらに昭和7年に大学直営の新京講習所を開設した。開校当初の実業補習学校(乙種商業学校)に始まり,甲種商業学校に昇格し,大連と奉天の商業学校はそれぞれの女子部を女子商業学校に分離独立させた。さらに台湾商工学校は開南商業学校と開南工業学校とに分離し,戦後の開南大学の礎となった。東洋協会はこれらの学校を適時に分離独立させ,現地居留地の一隅を照らしてきた。このような教育施策を1945年までのたったの四十数年間に成し遂げ,終戦時には卒業生共々その地の礎となった。その経緯を訪ねることが本稿の目的である。
著者
井上 近子
出版者
拓殖大学経営経理研究所
雑誌
拓殖大学経営経理研究 = Takushoku University research in management and accounting (ISSN:13490281)
巻号頁・発行日
no.112, pp.57-77, 2018-03-28

ファッション小売業を取り巻く環境は,注視すべき状況にある。グローバル化の波に乗って,世界の小売業が日本市場に進出して店舗展開を行っている。そのため,ファッション小売業者は競合店の脅威に対して注意を払いながら,常に消費者行動の変化に適応する必要に迫られている。消費者の購買動向を絶えず注視し,その動きに適合したマーケティング活動を展開することが重要な着眼点である。近年,マーケティング・プロモーションに代わって,マーケティング・コミュニケーションという言葉が多く使われるようになっている。店舗において商品を販売する際には,売り手と買い手との相互コミュニケーションは不可欠である。マーケティング・コミュニケーションの人的販売は,小売業が繁栄を続けていくために説得力がある要素であると考えられる。売場の販売員は,来店してくれた顧客に対して,時間をかけてじっくりとコミュニケーションを図り,納得して頂き,満足の行く接客をしなければならない。顧客がその商品を十分に納得し,そこから購入に至る行動は,コミュニケーションを通した反応プロセスである。その販売員の基本動作と顧客の購買心理を8つの段階に分け,各段階について解説を行った。人的販売は,ファッション小売業がマーケティング目標達成のために用いられる重要なプロモーション・メゾッドであるといえるだろう。本稿は,小売業における販売員と消費者がコミュニケーションを取りながら,消費者の購買意欲を高めるための販売・接客のプロモーション活動に対する調査・研究を試みたものである。