- 著者
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劉 志偉
- 出版者
- 埼玉大学教養学部
- 雑誌
- 埼玉大学紀要. 教養学部 = Saitama University Review. Faculty of Liberal Arts (ISSN:1349824X)
- 巻号頁・発行日
- vol.54, no.1, pp.121-135, 2018
本稿は、実生活では日々耳にするものの、日本語教材には取り上げられることがほとんどなかった言語現象であるラ行音撥音に注目して考察を行った。音声学や音韻論における専門用語を可能な限り避け、日本語学習者にとって分かりやすい学習ルールを提案することが、その目的である。具体的には、まず、マスメディアを中心に集めた用例をもって、ラ行音撥音の全体像を明らかにした。続いて、筆者自身が来日以来、記録してきた学習メモに基づいて、ラ行音撥音の中で、学習者にとっての難点と考えられる箇所を示した。そして、以上の点を踏まえた上で、ラ行音に由来する撥音を体系的に理解する学習ルールを提案した。また、近畿方言を含む「準標準語」を学習する際に、上記のルールが援用できる可能性についても言及した。日本語学と日本語教育が「別居」状態にあると言われる中、日本語学習者の視点を重視し、いわゆる標準語に限定せず、方言を視野に入れて学習する必要性、また、通時的観点を部分的に取り入れることがより効率的な現代語の学習に繋がる可能性を、「越境する日本語」という枠組みで捉えるものである。