- 著者
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須田 朗
- 出版者
- 中央大学人文科学研究所
- 雑誌
- 人文研紀要 (ISSN:02873877)
- 巻号頁・発行日
- vol.100, pp.1-31, 2021-09-30
哲学用語としての「超越」を古代から現代まで歴史的にたどることで哲学の歴史が鮮やかに見て取れる。大きく分けて三つの超越概念がある。プラトンは感覚的な自然世界のかなたにイデアの世界があると想定した。この形而上学的世界が超越世界だ。プラトンのこのイデア説を引き継いだのがキリスト教の超越神という考えで、ここに神学的超越概念が認められる。近代ではカントが超越論的哲学を唱える。コギトや主観から出発していかにして、心を超越する客観を正確に捉えることができるかが問題になる。ここに認識論的超越概念が見られる。カントはこの問題をコペルニクス的転回で解決し、神学的超越を否定した。ハイデガーは現存在の基本的存在構造としての世界= 内= 存在のうちに超越を見る。現存在は個々の存在者にかかわる前に常にすでに世界に超越している。この世界= 内= 存在こそが超越なのである。彼はこの存在論的超越概念から認識論的超越概念を批判する。