著者
土屋 武久
出版者
武蔵大学人文学会
雑誌
武蔵大学人文学会雑誌 = The journal of human and cultural sciences (ISSN:02865696)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.23-42, 2019-03

角川映画の『Wの悲劇』(1984年)には批評的な言説があるものの、現在に至るまで同作の評価は少女の成長物語としてのそれであり、作品の主題について深い理解を生まなかった憾みがある。本稿では、〈鏡像〉の考え方を手がかりに映画的テクストを追う。それによって示唆されるのは、鏡に映る自分の〈鏡像〉に狂おしいまでに同一化を願う主体と、主体の内部に入りこんでいつしか主体を支配・翻弄する〈鏡像〉とが、〈Double You〉とも呼ぶべき事態を招来し、両者の亀裂が主人公を悲劇へと導いた可能性である。山崎 光治 教授 特別号