- 著者
-
井上 昭一
- 出版者
- 関西大学
- 雑誌
- 關西大學商學論集 (ISSN:04513401)
- 巻号頁・発行日
- vol.50, no.1, pp.113-121, 2005-04-25
アルフレッド・P・スローン・ジュニア(1875〜1966)に関しては,経歴や経営哲学を含めあらゆる側面・角度から追求され分析され尽くした感があり,今更,私が仰々しく紹介するまでもないだろう。ただ一言でいいあらわすとすれば,私は,単に卓越したプロフェッショナル・マネジャー以上の存在であったとの敬意を込めて,彼のことを「インダストリアル・ステーツマン」と称したい。本稿は,当時ジェネラル・モーターズ社(以下GM)の会長(1937〜56年まで会長に在位)であったスローンが第2次大戦中の1943年12月に,「アメリカ産業戦時評議会」(Second War Congress of American Industry)で『挑戦』(The Challenge)と題して行った講演の記録を抄訳したものである。講演はきわめて広範多岐にわたっており,終戦後に企業,政府,個人を含めアメリカ合衆国全体が国際社会の中で歩むべき道や,それに向って努力することの重要性が,適切かつ具体的に表明されている。彼の講演録を読んだとき,私は古来よりわが国日本において語り継がれてきた名言,すなわち「夢なき者に目標なし。目標なきものに努力なし。努力なきものに成果なし。」を想起した。それほど明快な,資料的価値にとんだ内容であり,紹介する所似である。