著者
宮林 幸江
出版者
宮城大学
雑誌
宮城大学看護学部紀要 (ISSN:13440233)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.33-42, 2008-03

人間は多分に科学者のような論理〜実証モードではなく、物語モードで生きているとするナラティブセラピーに注目し、言語化も文章化にもなかなか馴じまない死別経験者の人生観を木の葉、幹として、擬人化して語らせる形で生死観の確認を促し、その結果を確認することを本研究の目標とした。方法では、まず導入ストーリーを読み上げ、寓話allegoryの作成を依頼した。次いで書かれた記述の内容分析を行った。喪失の対象者は配偶者、子供、親の15人。死後経過平均1.6年(SD1.4)。死因は自殺3人。事故死1人、病死10人、不明(死産)1人であった。回答者の平均年齢は48.5歳(SD13.0)その結果、まず1。葉の思い(推測による故人の思い)として最多のコアカテゴリーは"残される者へ"と"絶望"で7割、幹の思い(遺族自身の思い)として最も多いのは、"悲しみ・孤独"と"思慕"でそれぞれが8割を越え、3.物語の展開(今後)は"再会"が6割強近く、記述では「また一つの木になろう」、「人は生まれ死んで行く」、「土に返る」、「ずっと一緒」など輪廻転生の考えを据え心の安定を図っていた。全体に逝った人々への心情を思いやり、自らの人生観をためらいなしに綴り、9割以上の参加者が、死生観をまとめあげることに成功していた。