著者
高鳥 浩介 近藤 末男
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:13443941)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.453-459, 1979
被引用文献数
1

豚の常用飼料についてカビ汚染,分布の実態を調査した.供試飼料として,トウモロコシ,麦類,フスマ,ダイズ粕,魚粉,ルーサンペレット,配合飼料の7種,30点を集め菌学的検索をおこなった.豚飼料の構成は濃厚飼料が主体であり,カビ汚染度をみたところ,103~104/gの範囲にあって,飼料全体の汚染度および分布は比較的似た傾向にあった.またカビの分布をみると,Aspergillus, Penicillumの優先する飼料が多く,なかでもA. flavus, A, versicolor., A. glaucusが各飼料で広範に分布していた.PenicilliumではP. citrinum, P. oxalicum, P. rugulosumが高汚染菌であった.その他のカビでは,ケカビ類のMucorが比較的全般に検出され,他にはCandida, Cladosporium, Fasarium, Scopulariopsis, Wallemiaなどがみられた.カビ毒のうち, A. flavusの産生するアフラトキシン(B1, B2, G1, G2)およびA.versicolorの産生するステリグマトシスチンの産生能を,牛および豚飼料から分離したA.flavus 31株, A, versicolor 19株で行なったところ,アフラトキシン産生8株,ステリグマシスチン産生11株を得た.これらの株のうち,アフラトキシンB1 168.30ppm(トウモロコシ由来株),54.17ppm(ダイズ粕由来株)の高い産生量の2株を認めた.ステリグマトシスチン産生11株は,いずれも1ppm以下であった.しかし, A. versicolorの中でステリグマトシスチン産生株が6割近くに達することを考慮すると,家畜飼料中でのこの種のカビ汚染防除に注意する必要がある.また豚飼料でPenicillium, Fusariumの高い汚染,分布がみられたので,この種のカビ毒産生性を検討する必要がある.
著者
柴田 正貴 寺田 文典 岩崎 和雄 栗原 光規 西田 武弘
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:13443941)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, pp.1221-1227, 1992
被引用文献数
3 5

反芻家畜のメタン発生量に及ぼす乾草と濃厚飼料給与比率の影響を検討し,簡易なメタン発生量推定式の作成を試みた.供試動物は,ホルスタイン種未経産牛6頭,コリデール種成去勢雄めん羊10頭および日本在来種成去勢雄山羊11頭とした.給与飼料は,オーチャードグラス主体混播牧草を原料草とした乾草ウェハーおよび当場指定濃厚飼料(尿素1%入り,ペレット)であり,乾草と濃厚飼料の給与比率を乾物換算で100:0(H100),70:30(H70)および30:70(H30)とした3処理について実験を行なった.飼料給与量は,TDNで維持要求量の1.5倍を満足する量とした.その結果,次のような知見を得た.1) メタン発生量は,動物種間に有意差が認められ,牛の発生量はめん羊の7倍,山羊の9倍であった.2) メタン発生量は,H70処理にくらべてH30処理で有意に低い値を示した.これは,濃厚飼料多給に伴う飼料中のセルロース含量の低下,繊維成分消化率の低下等の要因に起因すると考えられた.3) 各種栄養成分摂取量当りのメタン発生量は,処理間に有意差を認めたが,動物種間に有意な差は認められなかった.4) 重回帰分析の結果,メタン発生量推定に対する最も有効な説明変数として,窒素,粗繊維および可溶無窒素物の摂取量あるいはそれらの可消化物摂取量が選択された.5) しかし,乾物摂取量(DMI)のみを説明変数として用いても推定精度の低下は小さく,TDNで維持の1,5倍程度の栄養水準における反芻家畜のメタン発生量の簡易な推定式として,以下の式が導出された.メタン発生量(1/日)=0.0305DMI(g/日)-4.441(r=0.992).