著者
栗原 光規 久米 新一 高橋 繁男 相井 孝允
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.375-382, 1991
被引用文献数
4 1

高温時における乾乳牛のエネルギー代謝に及ぼす給与粗飼料の影響を検討する目的で,ほぼ維持量のイタリアンライグラス乾草(IH区)あるいはトゥモロコシサイレージ(CS区:大豆粕150g追加)を各2頭のホルスタイン種乾乳牛に給与してエネルギー出納試験を行った.環境条件は,相対湿度を60%に保ち,環境温度を18,26および32°とした.その結果,1) 体温および呼吸数は,環境温度の上昇とともに有意に上昇,増加したが,飼料間に有意な差は認められなかった.2) 総エネルギー摂取量に対する熱発生量の割合は,32°で増加する傾向にあり,その増加量はIH区の方が高い傾向にあった.3) エネルギー蓄積量は,CS区と比べてIH区の方が有意に少なく,また,環境温度の上昇とともに減少する傾向を示した.4) 摂取代謝エネルギー量に対する熱増加量の割合は,IH区では環境温度の上昇にっれて,CS区では32°で増加する傾向を示した.5) 維持に要する代謝エネルギー量は,IH区では18°と比べて26および32°でそれぞれ約6および11%,CS区では18および26°と比べて32°で約10%増加した.
著者
柴田 正貴 寺田 文典 岩崎 和雄 栗原 光規 西田 武弘
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:13443941)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, pp.1221-1227, 1992
被引用文献数
3 5

反芻家畜のメタン発生量に及ぼす乾草と濃厚飼料給与比率の影響を検討し,簡易なメタン発生量推定式の作成を試みた.供試動物は,ホルスタイン種未経産牛6頭,コリデール種成去勢雄めん羊10頭および日本在来種成去勢雄山羊11頭とした.給与飼料は,オーチャードグラス主体混播牧草を原料草とした乾草ウェハーおよび当場指定濃厚飼料(尿素1%入り,ペレット)であり,乾草と濃厚飼料の給与比率を乾物換算で100:0(H100),70:30(H70)および30:70(H30)とした3処理について実験を行なった.飼料給与量は,TDNで維持要求量の1.5倍を満足する量とした.その結果,次のような知見を得た.1) メタン発生量は,動物種間に有意差が認められ,牛の発生量はめん羊の7倍,山羊の9倍であった.2) メタン発生量は,H70処理にくらべてH30処理で有意に低い値を示した.これは,濃厚飼料多給に伴う飼料中のセルロース含量の低下,繊維成分消化率の低下等の要因に起因すると考えられた.3) 各種栄養成分摂取量当りのメタン発生量は,処理間に有意差を認めたが,動物種間に有意な差は認められなかった.4) 重回帰分析の結果,メタン発生量推定に対する最も有効な説明変数として,窒素,粗繊維および可溶無窒素物の摂取量あるいはそれらの可消化物摂取量が選択された.5) しかし,乾物摂取量(DMI)のみを説明変数として用いても推定精度の低下は小さく,TDNで維持の1,5倍程度の栄養水準における反芻家畜のメタン発生量の簡易な推定式として,以下の式が導出された.メタン発生量(1/日)=0.0305DMI(g/日)-4.441(r=0.992).
著者
山崎 信 村上 斉 中島 一喜 阿部 啓之 杉浦 俊彦 横沢 正幸 栗原 光規
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.231-235, 2006-05-25
参考文献数
11
被引用文献数
5 6

わが国で飼養されているブロイラーの産肉量に対する地球温暖化の影響を各地域の月平均気温の変動から推定した.環境制御室を用いて気温が産肉量に及ぼす影響を検討したところ,23℃における産肉量と比べて5および15%低下する気温はそれぞれ27.2および30.0℃であることが示された.夏季(7,8および9月)について,その気温域に該当する区域を日本地図上に図示するプログラムにより,地球温暖化の影響を解析した.将来の気候予測データとして「気候変化メッシュデータ(日本)」を用い,約10×10km単位のメッシュで解析を行った.その結果,2060年の7~9月における気温の上昇は,九州の宮崎市および鹿児島市において1.8~2.5℃,東北の青森市および盛岡市において3.0~4.5℃と推定された.また,7,8および9月の各月とも,2020年,2040年,2060年と年代の経過とともに産肉量への地球温暖化の影響が大きくなることが予測され,とくに九州,四国,中国,近畿などの西日本において産肉量が比較的大幅に低下する地域の拡大が懸念された.さらに,現在は産肉量が低下する気温ではない東北地方も,年代の経過とともに産肉量の低下する地域になる可能性が示された.九州および東北地方はわが国の鶏肉生産の半分以上を生産する主要地域であるが,今後とも高い生産を維持するためには地球温暖化を考慮した飼養法の改善が必要であると考えられた.以上の結果から,地球温暖化は今後半世紀でわが国の鶏肉生産に大きな影響をもたらす可能性が示された.
著者
寺田 文典 栗原 光規 西田 武弘 塩谷 繁
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.163-168, 1997-02-25
参考文献数
16
被引用文献数
10 1

95例の泌乳牛による窒素出納試験成績を用いて,泌乳牛に由来する糞尿中への窒素排泄量の推定式を作成し,その低減の可能姓について検討した.その結果,1) 4%乳脂補正乳(FCM)1kg当たりの窒素排泄量(N/FCM)は,N/FCM(g/kg)=-14.48×ln(FCM)+0.806×CP+0.769xDMI+31.4(CP;粗タンパク質,%DM,DMI;乾物摂取量,kg)により推定することができた(R<sup>2</sup>=0.864,RSD=0.92).2)N/FCMに対するln(FCM),CP,DMIの偏相関係数は,順に,-.917,.828,.830であり,N/FCMがFCM量の増加とともに減少し,CP水準の上昇,乾物摂取量の増加とともに増加することが示された.3) したがって,FCM生産量当たりのN排泄量の低減化のためには,乳量水準の増加を図ること,CP水準を御制すること,エネルギー濃度の向上を図り,乾物摂取量を抑制すること等が有効であるものと考えられた.