著者
畠山 均 菅原 浩視 佐々木 力
出版者
岩手県農業研究センター
雑誌
岩手県農業研究センター研究報告 (ISSN:13464035)
巻号頁・発行日
no.2, pp.85-98, 2001-12

「ぎんおとめ」は、旧岩手県立農業試験場(現;岩手県農業研究センター)において、早生の酒造好適米品種の開発を育種目標に、1990年、「秋田酒44号」を母に、「東北141号」(後の「こころまち」)を父として交配した組合せの後代から育成選抜した品種である。奨励品種決定調査、醸造適性試験などにおいて、酒造好適米として有望と判断され、2000年に岩手県の奨励品種に採用された。熟期が「美山錦」より早く「たかねみのり」並からやや早く、短稈で草型は偏穂数型である。「美山錦」に比べいもち耐病性が優り、耐倒伏性は並、障害型耐冷性はやや劣り、心白の発現も少ないが大粒で多収である。また「美山錦」に比べ粗タンパク質含有率がやや多いが、70%精白米の吸水率がやや優り、砕米混入率がやや少ない等醸造適性はほぼ「美山錦」並であり、醸造酒の官能評価も「美山錦」並である。「ぎんおとめ」の栽培適地は岩手県内の岩手郡を中心とした地帯であり、最大600haの栽培が見込まれる。
著者
岩舘 康哉
出版者
岩手県農業研究センター
雑誌
岩手県農業研究センター研究報告 = Bulletin of the Iwate Agricultural Research Center (ISSN:13464035)
巻号頁・発行日
no.13, pp.69-159, 2014-03

2005年から2012年までの8年間にわたり,キュウリホモプシス根腐病の発生生態および防除法に関する一連の研究を行った。成果は次のとおりである。1. 病徴および発生実態 (1) 岩手県で本病は,2002年に県内58市町村のうち県南部の3市町で初発生が確認された。2012年には県内33市町村のうち県北沿岸部を除くほぼ全域にまたがる16市町村(2002年当時の市町村区分では29市町村)まで急激に発生地域が拡大した。本病の発生と連作年数の関係をみると,長期連作圃場だけでなく,新規作付圃場や作付5年以内の栽培歴の浅い圃場で発生する事例も多数認められた。本病による被害発生圃場における土壌消毒の実施割合は,2007年から2011年の平均で約40%であり,被害圃場の約60%では,土壌消毒を実施しないまま栽培が継続されていた。(2) 岩手県における主力の露地夏秋キュウリ圃場における本病の特徴的な病徴は,定植30日以降の収穫開始期前後から認められる萎凋症状と,根部での疑似微小菌核(Pseudomicrosclerotia)および偽子座(Pseudostromata)の形成であった。萎凋症状は,曇雨天後の晴天など宿主の水分ストレスが急に高くなる条件で発生が多かった。また,露地夏秋キュウリの場合,本病の被害は夏季高温年よりも夏季冷涼年に被害が大きくなるものと考えられた。(3) 圃場には本病類似の急性萎凋症状も同時に確認され,その原因は,1) キュウリ株の根群形成不良に起因するもの,2) 栽培・肥培管理に起因するもの,3) 病害虫によるものが認められた。病害虫によるものでは,キュウリモザイクウイルスとズッキーニ黄斑モザイクウイルスの重複感染,つる枯病,つる割病,疫病,ネコブセンチュウ害,黒点根腐病などであった。(4) 本研究中にキュウリ黒点根腐病が国内初確認された。本病の特徴は,地上部の萎凋と根部での子のう殻の形成であり,形態およびPCRによる同定の結果,病原菌はMonosporascus. cannonballusであることが明らかとなった。本病は自根キュウリでのみの発生確認であり,カボチャ台木を用いた接ぎ木栽培の場合は発生が認められなかった。
著者
山口 貴之
出版者
岩手県農業研究センタ-
巻号頁・発行日
no.15, pp.1-45, 2016 (Released:2016-10-20)
著者
菅野 史拓 児玉 勝雄 菅原 英範
出版者
岩手県農業研究センタ-
雑誌
岩手県農業研究センター研究報告 (ISSN:13464035)
巻号頁・発行日
no.2, pp.131-136, 2001-12

キャベツの種子重量は、軽いものから重いものまでほぼ正規分布に近い分布を示していた。種子重量が軽い種子からは小さな苗が、重い種子からは大きな苗が生産され、軽い種子ほど生育がばらつく傾向にあった。種子重量の違いによる苗の生育差は、活着に影響を与えており、定植後もその生育差が縮まることはなかった。そのため、キャベツの生育斉一化のためには、種子重量を揃える必要があると考えられる。また、小さな種子は、登熟前の未熟な種子を多く含み、発芽が弱く生育がばらつく傾向にあることから、除去する事が必要である。
著者
高橋 好範 和野 重美 吉田 宏
出版者
岩手県農業研究センタ-
雑誌
岩手県農業研究センター研究報告 (ISSN:13464035)
巻号頁・発行日
no.3, pp.121-127, 2003-03
被引用文献数
1 1

岩手県の県中北部でも栽培可能な早生の酒造好適米品種「ぎんおとめ」について、心白発現率40%以上で検査等級1等以上を確保することと、70%搗精白米中の粗タンパク質含有率が5.7%以下となることを特に重視して栽培法を検討した。心白発現率や検査等級、および白米中粗タンパク質含有率等の酒造好適米品としての品質を確保するためには目標生育量としてm2当たり籾数で21~29千粒/m2程度とすることが重要であると判断した。これを確保するための施肥法としては、基肥は標肥とし幼形期の栄養診断指標を基に追肥の要否判定を行い、追肥を行う場合には減分期を重点時期とする。減分期追肥は幼形期追肥に比較して籾数が低下することや白米中の粗タンパク質含有率をやや上昇させる点で不利であるが、登熟歩合や心白発現率は減分期追肥が有利であることや、障害不稔に対するリスクも考慮して総合的に減分期が有利と判断した。追肥時期を減分期にすることによる粗タンパク質含有率の上昇割合は小さく、目標m2当たり籾数の範囲内であれば酒造適性基準の範囲内に十分制御可能である。「ぎんおとめ」の葉色は「たかねみのり」などに比較してかなり淡いことから、追肥の要否判定の際には注意を要する。品質を重視した刈取り適期は出穂後の積算平均気温で1000~1100℃を確保した頃である。