著者
松本 淳
出版者
日本アニメーション学会
雑誌
アニメーション研究 (ISSN:1347300X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.17-26, 2018-03-01 (Released:2021-05-07)
参考文献数
16

日本の商業アニメーションの世界で CG作品が存在感を増している。 2013年10月に放送された『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』がその起点となり、 2017年現在も1月より放送された『けものフレンズ』と、4月より放送されている『正解するカド』が話題となっている。これらに共通するのが、3DCGを作品制作に用いている点となる。3DCGがアニメーションに及ぼす影響は、単に制作手法に留まらず、アニメーションのビジネスひいては産業構造にも至る。本論文では、各作品のプロデューサーらへのヒアリングと先行研究を用いて、その考察を行いたい。
著者
布山 タルト
出版者
日本アニメーション学会
雑誌
アニメーション研究 (ISSN:1347300X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.27-38, 2018-03-01 (Released:2021-05-07)
参考文献数
10
被引用文献数
3

日本の初等教育におけるアニメーション教育に関する歴史的知見の蓄積を目的として、小学校の図画工作の教科書の中でアニメーション題材がどのように扱われてきたかを調査した。計677冊の教科書から25の題材を抽出し、4つの時期に区分してその変遷を俯瞰した。本稿の通時的視点からの分析を通じ、図画工作教科書におけるアニメーション題材の発祥と、その後の変遷が明らかになった。またそれらの題材に通底するアニメーションの教育的意義には「ヴィジュアルコミュニケーション教育」としての側面と「経験主義教育」としての側面があることを示した。
著者
萱間 隆
出版者
日本アニメーション学会
雑誌
アニメーション研究 (ISSN:1347300X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.39-48, 2018-03-01 (Released:2021-05-07)
参考文献数
30
被引用文献数
1

『くもとちゅうりっぷ』(1943)と『桃太郎海の神兵』(1945)は、アジア・太平洋戦争期の傑作として扱われてきた。そして、両作に関する研究が盛んになるにつれ、その政治的含意がさまざまな形で指摘されている。その一方で、これらに特徴的にみられるリップシンクについては議論されてこなかった。そこで本稿では、両作の制作に携わった政岡憲三に着目し、 2つの問いを検討する。 1つは、リップシンクがどのようにして取り入れられるようになったかである。この点については、フライシャーなどアメリカのアニメーションからの影響があった。もう 1つは、『くもとちゅうりっぷ』と『海の神兵』におけるリップシンクが何を表象していたのかであるが、これは「大東亜共栄圏」の建設など政治性が強く関係していた。この 2つの問いを考察することによって、戦前の政岡がアメリカの制作手法を模倣しつつ、輸入されたアメリカのアニメーションに対抗しようとしていたことを論じる。さらに、アメリカの作品の上映が禁止されたアジア・太平洋戦争期において、政岡は芸術性の高いアニメーションを制作することでアメリカに対抗しようとしていた。このような彼の思想と『海の神兵』の監督である瀬尾光世の思想とが、どのように異なっているかについても分析を行う。
著者
中島 信貴
出版者
日本アニメーション学会
雑誌
アニメーション研究 (ISSN:1347300X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.49-54, 2018

<p>1980年代初頭コンピュータゲームの黎明期、2D中心のゲーム映像は日本のアニメーション技法を取り入れながら進化をスタートさせた。21世紀からは3DCGの技術を取り入れハードソフトとも進化し、今日、VR(ヴァーチャルリアリティー)やMR(ミックスドリアリティー)の時代に入った。その過程で常にクリエイターに突きつけられてきた課題がアニメーション表現である。ハードウエアの厳しい制約の中で、いかに美的な動きを提供できるか問われ続けてきたゲームのアニメーション。その原点を考察する。次にゲームの原点である「遊び」の要素とアニメーションとの密接な関わりを論じる。最後にゲーム特有のアニメーションについて述べる。</p>