著者
岩本 和久
出版者
稚内北星学園大学
雑誌
稚内北星学園大学紀要 (ISSN:13477900)
巻号頁・発行日
no.8, pp.39-48, 2008-03

視覚的なスポーツ表象は、古代エジプトやギリシアにまでさかのぼることができる。スポーツの歴史は美術と深く結びついていると言っても過言ではない。 ソ連においてスポーツ文化は華々しい発展を遂げたが、その美術においてもスポーツは積極的に取り上げられていた。では、ソ連解体後の現代ロシアにおいて、アーティストはスポーツ文化にいかにアプローチしているのであろうか? 本論文では2015年のヴェネツィア・ビエンナーレの関連展示として注目された2つの作品、すなわちグリーシャ・ブルスキン「考古学者のコレクション」とAES+F「Inverso Mundus」を分析しながら、そこでスポーツ文化が空虚な反復や死と結び付けられていること、同時にまた、スポーツ文化に潜在するエネルギーの存在も認められていることを、明らかにしている。このようなスポーツ理解はポストモダン的な批評精神の現われとも言えるが、一方で古代的なものとも言えるだろう。