著者
岩本 和久 中野 幸男 宮川 絹代
出版者
札幌大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

シニャフスキー、ブロツキー、ヴェネジクト・エロフェーエフ、マムレーエフらの著作を分析しながら、ソ連文学における「狂気」の表象の諸相を探り、作家たちの「抵抗」しているものが何かを明らかにする。また、この作業に平行する形で、ソ連の精神医療の諸問題を調査する。具体的な研究計画としては、文献資料の購入、日本国内やロシアの図書館を利用した文献調査、研究会の開催、学会や国際会議での研究報告を予定している。2020年度はソ連国内における非公式作家の活動や精神医療の状況について分析する。2021年度は作家の亡命先での活動を分析する。2022年度は非公式作家・亡命作家の作品がソ連後の文学に与えた影響を探る。
著者
岩本 和久
出版者
稚内北星学園大学
雑誌
稚内北星学園大学紀要 (ISSN:2189244X)
巻号頁・発行日
no.16, pp.39-48, 2016-03-31

視覚的なスポーツ表象は、古代エジプトやギリシアにまでさかのぼることができる。スポーツの歴史は美術と深く結びついていると言っても過言ではない。 ソ連においてスポーツ文化は華々しい発展を遂げたが、その美術においてもスポーツは積極的に取り上げられていた。では、ソ連解体後の現代ロシアにおいて、アーティストはスポーツ文化にいかにアプローチしているのであろうか? 本論文では2015年のヴェネツィア・ビエンナーレの関連展示として注目された2つの作品、すなわちグリーシャ・ブルスキン「考古学者のコレクション」とAES+F「Inverso Mundus」を分析しながら、そこでスポーツ文化が空虚な反復や死と結び付けられていること、同時にまた、スポーツ文化に潜在するエネルギーの存在も認められていることを、明らかにしている。このようなスポーツ理解はポストモダン的な批評精神の現われとも言えるが、一方で古代的なものとも言えるだろう。
著者
岩本 和久
出版者
ロシア・東欧学会
雑誌
ロシア・東欧研究 (ISSN:13486497)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.33, pp.59-68, 2004 (Released:2010-05-31)

Zoshchenko, like many other Russian writers during the 1920s, was interested in psychoanalysis. Zoshchenko criticized Freud in his novel, Before Sunrise, when the Soviet government blamed psychoanalysis in Stalinist Russia. Some scholars suspected that his criticism was merely an excuse for pursuing his interest in psychoanalysis and that the novel was condemned specifically because of references to Freud. After the era of “perestroika”, many biographical materials have been documented and published. As a result, now we can discuss Zoshchenko's interest in psychoanalysis more accurately.In Before Sunrise Zoshchenko analyses his dreams in an attempt to recognize his earliest experiences, which he has forgotten. He intends to find stimuli, which cause his melancholy, in his past. This idea is based on the physiological psychology theories of Pavlov, but Zoshchenko's search of trauma in his life and his symbolic interpretation of dreams are more reminiscent of Freudian theory.Zoshchenko's interest in psychoanalysis and physiology is consistent with the literature at that time. His interest shows his belief in reason; which was emphasized in the Stalin era. Such an emphasis on science can be seen in newer literary genres: Science Fiction and Socialist Realism. Psychoanalysis, however, influences the style of Before Sunrise as well as its philosophy: symbolism of psychoanalysis penetrates not only the interpretation of dreams, but also the description of real life.Various biographical materials show that Before Sunrise was condemned not because of references to Freud, but because of its support of individualism and deviations from the canon of the Socialist Realism, both of which were consistent with psychoanalysis.
著者
望月 恒子 諫早 勇一 中村 唯史 岩本 和久 谷古宇 尚 越野 剛 井澗 裕
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

「辺境と異境」という視点からロシア文化の研究を行った。具体的には、第一に、極東、サハリンなどの辺境と中央(モスクワ、ヨーロッパ・ロシア)との文化的相互作用を研究した。第二に、中国・日本やヨーロッパにおける亡命ロシア社会の文化活動について、文学、美術、宗教など多岐にわたる分野で、その特徴を調査研究した。非中心といえる「辺境と異境」を視点とすることによって、ロシア文化を包括的に捉えることができた。
著者
望月 恒子 諫早 勇一 中村 唯史 岩本 和久 宮川 絹代 井澗 裕 イコンニコヴァ E.A. 越野 剛 塚田 力
出版者
北海道大学大学院文学研究科
巻号頁・発行日
2010-03-31

平成21-24年度科学研究費補助金 基盤研究(B)(課題番号:21320061)研究成果報告書
著者
岩本 和久
出版者
稚内北星学園大学
雑誌
稚内北星学園大学紀要 (ISSN:13477900)
巻号頁・発行日
no.8, pp.39-48, 2008-03

視覚的なスポーツ表象は、古代エジプトやギリシアにまでさかのぼることができる。スポーツの歴史は美術と深く結びついていると言っても過言ではない。 ソ連においてスポーツ文化は華々しい発展を遂げたが、その美術においてもスポーツは積極的に取り上げられていた。では、ソ連解体後の現代ロシアにおいて、アーティストはスポーツ文化にいかにアプローチしているのであろうか? 本論文では2015年のヴェネツィア・ビエンナーレの関連展示として注目された2つの作品、すなわちグリーシャ・ブルスキン「考古学者のコレクション」とAES+F「Inverso Mundus」を分析しながら、そこでスポーツ文化が空虚な反復や死と結び付けられていること、同時にまた、スポーツ文化に潜在するエネルギーの存在も認められていることを、明らかにしている。このようなスポーツ理解はポストモダン的な批評精神の現われとも言えるが、一方で古代的なものとも言えるだろう。
著者
岩本 和久 梅村 博昭
出版者
稚内北星学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では1960年代以降のロシア文学に見られるスターリニズム表象の系譜について、リアリズムとポストモダニズムの間で揺れる現代ロシア文学の変化を参照しながら検討した。また、それら文学作品が21世紀のロシアにおいてテレビ・ドラマ化され、新たに神話化されていく様を検討した。それらを通し、現代ロシア文化におけるスターリニズム表象の志向として、悲劇の告発とユートピアの賛美という対立する要素を明らかにした。
著者
望月 哲男 亀山 郁夫 松里 公孝 三谷 惠子 楯岡 求美 沼野 充義 貝澤 哉 杉浦 秀一 岩本 和久 鴻野 わか菜 宇山 智彦 前田 弘毅 中村 唯史 坂井 弘紀
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

ロシア、中央アジア、コーカサス地域など旧ソ連圏スラブ・ユーラシアの文化的アイデンティティの問題を、東西文化の対話と対抗という位相で性格づけるため、フィールドワークと文献研究の手法を併用して研究を行った。その結果、この地域の文化意識のダイナミズム、帝国イメージやオリエンタリズム現象の独自性、複数の社会統合イデオロギー間の相互関係、国家の空間イメージの重要性、歴史伝統と現代の表現文化との複雑な関係などに関して、豊かな認識を得ることが出来た。