- 著者
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隅田 孝
- 出版者
- 四天王寺大学
- 雑誌
- 四天王寺大学紀要 (ISSN:18833497)
- 巻号頁・発行日
- no.65, pp.213-225, 2018-03-03
クチコミによる企業のマーケティングは、今日においてはなくてはならないマーケティング手法の1 つであると認識されている。いわゆるSNS による商品情報の拡散や商品の良し悪しを明示することによる商品評価が定着するにつれ、企業にとって、クチコミはその扱い方ひとつでメリットにもデメリットにもなりうるのである。 まず、クチコミはその性質上、企業のマーケティングにダイレクトに影響しうるものと、ダイレクトにではなく間接的にその影響を及ぼすものがあり、これらのタイプをクチコミ・ポジショニングを用いて明らかにする。次に、上記のクチコミ・ポジショニングに合わせてクチコミの分類を試みた既存研究を用い4 つのクチコミのタイプを明示する。さらに、消費者の情報認知段階に合わせたクチコミ伝播のメカニズムについても既存研究を援用し2 段階モデルとして明示する。最後に、消費者によるインターネット上での消費者行動に言及し、ブランド・コミュニティの存在を指摘する。 しかし、これからのクチコミと企業のマーケティングのあり方、つまり、今日インターネット上で展開される新たな消費者行動の形態ととらえることのできるSNS とそれらSNS が新たに登場しては短期間で消え去ってしまうことが危惧される現状がある。本稿ではあえてSNS の今日的な有用性と解釈されがちな点に目を向けるのではなく、クチコミの本来の理論的位置づけを整理し再確認することを意識しつつ、クチコミの本質について再考察することを試みるものである。