著者
勝田 吉彰
出版者
日本渡航医学会
雑誌
日本渡航医学会誌 = Journal of the Japanese Society of Travel and Health (ISSN:18838065)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.8-13, 2016

本稿では,第20回日本渡航医学会 Meet the Experts 講演にて発表した内容を中心に,渡航医学関連のリスクコミュニケーションについて紹介する.ジカウイルス感染症関連では,最初は「頭の小さな子供が生まれる」程度の実際より軽度の認識から始まり,時間の経過とともにより深刻な知見が次々発表されるという経過から,一般社会の関心を引きつける上で不利な状況となっていることを含め,特有の難しさについて解説するとともに,WHO・米CDC・シンガポール・日本政府など公的機関のリスクコミュニケーション例をあわせて紹介した.後半では,筆者の経験を中心に,北京のSARS流行における外務省医務官としての経験,H1N1pdm,EVD,ジカウイルス感染症流行時にマスメディアを通じて発信した経験から導かれる知見を紹介した.最後に新聞記者に対する過去のアンケート調査や,TV関係者を含む知人から聞き取った医学界に望む声を紹介した.
著者
勝田 吉彰
出版者
日本渡航医学会
雑誌
日本渡航医学会誌 (ISSN:18838065)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.34-37, 2014

民主化による政治経済状況の改善とともに日系企業の進出および在留邦人数が急増しつつあるミャンマーのメンタルヘルス環境について, 2014年の状況をアンケート調査および聞取り調査を行った. 現地の在留邦人は,民主化以前から駐在していた群,民主化後の進出ブームに乗ってきた群,若年起業者や個人事業主の3群が主である.邦人のストレス要因として,インフラ(通信・生活・交通・医療)の未整備, ミャンマ一人,娯楽の欠如が上位を占めた.また,数は少ないものの,間取りが進むと, 「急速な変化の下,国の運営のされ方が分からないこと,現状把握のむずかしさ」,「日本の本社」など仕事上の困難が明らかになった. 「感染症の存在」はストレス要因として認識されることは少ないものの狂犬病は市街地における野良犬の跋扈という形で可視化されやすく,多く気にされていた.