著者
鈴木 哲
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学学芸学部研究紀要 = JSLA (Journal of the School of Liberal Arts) (ISSN:18849865)
巻号頁・発行日
no.13, pp.25-44, 2020-11-30

中島敦(1909-42)は格調高い表現,学識,厭世観を特徴とする東京生まれの小説家で(Kodansha, 1993, p. 1038),1951年以後高等学校国語教科書採用の「山月記」(1942)で知られる。夫人の中島(旧姓橋本)タカ(1909-84)は愛知県碧海郡依佐美村(1906-55)の出身である。本稿は敦が1931年と1942年に依佐美村大字高棚字新池(現安城市高棚町)のタカの生家を訪問したとする従前説を検討, 1933年3月と1942年8月であったことを明らかにする。また, 敦の万葉歌「あをみづら,よさみの原」 (7:1287)への関心,敦が依佐美の「無線電信の高い塔が立っている風景」にあったとする1942年8月のタカ回想を紹介する。タカが東京で33歳の小説家を看取ったのは里帰りの4カ月後である。
著者
木村 洋太
出版者
桜花学園大学学芸学部
雑誌
桜花学園大学学芸学部研究紀要 = Journal of the School of Liberal Arts (ISSN:18849865)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.93-100, 2018-02-28

大学全入時代の到来により、高等教育における学生の多様化が進んでいる。学生の学力低下の問題、発達障がいを始めとする合理的配慮を必要とする学生の増加の問題などに対して各高等教育機関は、これまで以上にその対策と対応、必要な修業支援体制の整備に追われている。このような社会的な背景の中で、大学教員および職員は、学生の心身・情勢の問題理解、心理的・教育的支援の在り方、相談姿勢の在り方について、再認識を求められているといえるだろう。そこで本稿では、現代大学生のこころの様相を捉えつつ、教員レベルでの学生相談の役割を再確認していくこととする。特に、青年期前半に形成される特徴的な友人関係であるチャム・グループが、大学や短期大学などの高等教育機関においてもいまだ散見されることを踏まえつつ、自由と不安の中で模索する学生たちにどのように寄り添っていくのか考察を試みる。
著者
佐分 ジュディス
出版者
桜花学園大学学芸学部
雑誌
桜花学園大学学芸学部研究紀要 = JSLA (Journal of the School of Liberal Arts) (ISSN:18849865)
巻号頁・発行日
no.10, pp.69-76, 2019-02-28

Selective Mutism is an anxiety disorder and a student with SM has a clinical phobia of speaking in class. This article covers identifying a SM student and different treatment methods. The article also provides teachers with information to support students with selective mutism by understanding SM studies triggers, communicating with parents, and therapists, and collaboratively developing strategies to encourage these students to have the courage to speak.
著者
井川 恵理
出版者
桜花学園大学学芸学部
雑誌
桜花学園大学学芸学部研究紀要 = JSLA (Journal of the School of Liberal Arts) (ISSN:18849865)
巻号頁・発行日
no.10, pp.1-12, 2019-02-28

ウィーダ(Ouida)著「フランダースの犬(A Dog of Flanders)」(1872)には、厳しい生活環境の中でネロとパトラッシュが断ち難い絆で結びつく過程、ネロの心を支える芸術の世界が描かれている。本稿では、物語冒頭で「ネロはアルデンヌ生まれ、パトラッシュはフランダースの出身」と告げる設定に着目し、現代にも継承される言語的文化的差異、すなわちフランス語地域のワロン地域にあるアルデンヌ、オランダ語圏であるフランダースの独立意識がウィーダ自身が旅した19世紀末には、より強く感じ取られていた可能性があり、「絆」で結ばれる異文化という眼差しがあった可能性を考察している。