著者
三浦 もと子
出版者
公立大学法人 国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域
雑誌
国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域実習報告論文集 (ISSN:21853983)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.250-265, 2012

筆者は、大学院で三度の日本語教育実習を経験し、その過程で改善を必要とする多くの課題を発見した。本稿では、その中でも特に、筆者がおこなったタスクベースの授業について取り上げる。先行研究文献を参考に、自分の授業を振り返ると、筆者の授業では、学習者のコミュニケーション能力を伸ばすことを意図しながらも、タスクベースの授業の特徴を十分に活かしきれていなかったこと、メインタスク(本作業)の前に行う準備やタスク後のフィードバックが疎かになっていたこと、学習者に自らのパフォーマンスに意識を向け、自己修正をおこなう機会を提供していなかったことなどが明らかになった。これらの課題を改善する方法を考え、今後タスクベースの授業を行う際に意識すべき点をまとめる。
著者
工藤 優
出版者
公立大学法人 国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域
雑誌
国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域実習報告論文集 (ISSN:21853983)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.84-100, 2013-09-30 (Released:2017-12-08)

本稿は,教育実習を通して課題となった訂正フィードバックについて論述する。秋実習と冬実習の反省から,春実習は,インターアクションを行いながら誤用の訂正が可能な暗示的フィードバックを効果的に行うことを目標とした。その結果,コミュニケーションの流れを中断せずに学習者とインターアクションを実現することができた。その一方で,筆者の訂正に学習者が気付かない,または気付いても正用を認識していない例などがみられた。改善案として,声のトーンを変えたり,明示的フィードバックを使用したりすることで,より効果的な訂正フィードバックが与えられると考えた。また,リキャスト以外にも,誤用の部分を教師が繰り返すことで誤りに気付かせる方法や,学習者の誤用をプリントにまとめたクラスフィードバックも有効であることが分かった。
著者
荒井 美帆
出版者
公立大学法人 国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域
雑誌
国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域実習報告論文集 (ISSN:21853983)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.38-64, 2019 (Released:2019-10-07)

本稿は,JFL環境における思考力向上を狙った文化授業を考察するものである。筆者は日本国内の予備教育機関において,数年間日本語教育に携わった経験があるが,文化授業を受け持ったことはなかった。筆者が在籍する大学院の日本語教育実習において初めて文化授業を担当したことにより,これまでJFL環境における日本語教育の意義を真摯に考えたことがなかったこと,文化を教える際に必要となる視点が欠けていたこと,学習者の思考力向上を意識した学習目標を設定していなかったことに気がついた。そこで,先行研究からこれら3つの問題点を整理し,文化授業の改善案を提案することにした。文化授業を行う際に必要な視点には久保田(2008)が提唱する4Dアプローチを取り入れ,思考力向上を目指した学習目標のフレームワークにはCLIL(Content and Language Integrated Learning)の特徴である4Cを用いた。
著者
和田 結希
出版者
公立大学法人 国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域
雑誌
国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域実習報告論文集 (ISSN:21853983)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.115-145, 2019 (Released:2019-10-07)

国際教養大学専門職大学院日本語教育実践領域で秋から春にかけて実施される3つの異なる教育実習では,具体的なコミュニケーション場面における実践的な口頭運用能力の向上を目標とした日本語の指導が奨励されている。本稿では「発話につながるわかりやすい授業とは何か」という問いに答えるため,これらの実習を通じて筆者が行ってきた教育実践を「認知的複雑さ」という観点から振り返る。筆者は秋と冬に行った2つの実習から得た気づきを基に,最後の実習では「一般的にわかりやすい授業=認知的に単純な授業」と仮定し,認知的複雑さを調節する指標を作成した後,教案作成を行った。実習後,そうした取り組みが本当に認知的に単純な授業になっていたのか,また実際に学習者の発話量に差は見られたのか学習者からのフィードバックやビデオ等を資料として検証した。その結果,学習者にとってわかりにくく話しにくい授業があったことが判明し,そのわかりにくさ・話しにくさが活動に必要な手順の不明瞭性や先行知識の不十分な提供に起因することが明らかになった。
著者
張 雨潔
出版者
公立大学法人 国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域
雑誌
国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域実習報告論文集 (ISSN:21853983)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.65-87, 2019 (Released:2019-10-07)

本稿は筆者が教育実習で学習者の沈黙について検証を行ったアクションリサーチである。筆者は3期にわたる教育実習を振り返り, 実習中に録画された授業のビデオを観察した結果から, 冬・春実習において授業中の学習者の沈黙が多いことに気づいたと同時に, 学習者の沈黙に対して大きな不安とストレスも感じた。そのため, 録画されたビデオにおける筆者の発話を分析しつつ, 学習者の沈黙が起こった原因をさらに探っていくと, 筆者の質問に一貫性がないこと, 終始同じ質問を繰り返すことや説明不足のままで活動が行われることなどがわかった。また, 筆者の心理的な不安で学習者の回答を待たないこともわかった。本稿では, 授業で起こった沈黙の分析を通して問題点の理由と改善案を提示する。