著者
木下 一雄
出版者
名寄市立大学
雑誌
名寄市立大学社会福祉学科研究紀要 (ISSN:21869669)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.25-39, 2016-03-31

ここ最近、施設内における介護職員による利用者に対しての虐待行為の増加が目立ってきている。新聞やテレビで介護職員の施設内で起こした凄惨なニュースを見ない日はないほどの状況になっている。平成25年度に行った厚生労働省の調査結果によると、高齢者虐待の原因となっている要因として、介護職員の教育や知識、技術に問題があったとされるケースが調査全体の総数の66.3%を占めており、いかに介護職員に対する教育力が現場で低下しているのかが、数字として目に見える形として表れてきている。つまりは、今の介護職員にとって倫理観、想像力の欠如、利用者が今まで歩んできた人生を含め、包括的にとらえていくアセスメント能力が欠如してしまった結果が、このような不祥事につながってきているのではないだろうか。今回の実践活動報告において、自身が勤務していた認知症専門病棟の精神科病院において20代男性介護職員に対し、利用者と関わる上で著者自身が考案した面接指導プログラムに添った支援を通して、いかにその指導プログラムを受けたことにより、対象者自身が利用者に対する関わり方の変化があったのかについて報告していく。そして凄惨な状況が繰り返されている状況において、利用者に対する想像力を豊かにし、言葉で表現できない表情やしぐさなどに意識を向け、様々な思いをアセスメントしていくことの重要性について示唆していく。
著者
松岡 是伸
出版者
名寄市立大学
雑誌
名寄市立大学社会福祉学科研究紀要 (ISSN:21869669)
巻号頁・発行日
vol.2, 2013-08-31

本稿はイギリスのソーシャルポリシー研究者であるスピッカーのスティグマに関する見解に着目し、ソーシャルポリシーにおけるスティグマをどのように据え位置づけていたか、さらにはスティグマの概念、付与過程、特徴、構造などを明らかにすることが目的である。 その結果、スピッカーのスティグマに関する見解からスティグマは不名誉な徴であり恥辱の感受や差別的経験、人間的尊厳の喪失、憐憫の対象であり、それによってスティグマを負う人々は力を失っていく経験をしていた。そしてスティグマを負う人々は自分自身のモラルキャリアから生じるスティグマの問題と、構造化された社会関係から生じるスティグマの問題の双方に影響され社会的位置や環境が規定されていた。 スティグマとソーシャルポリシーとの関係では、スティグマは社会的、文化的、経済的幅広い社会的文脈において規定されており、スティグマの問題を解決する単一の方法は存在しない等の視点が明らかとなった。
著者
長谷川 武史
出版者
名寄市立大学
雑誌
名寄市立大学社会福祉学科研究紀要 (ISSN:21869669)
巻号頁・発行日
no.4, pp.17-30, 2015-03

本研究では、セーフコミュニティにおけるレジリエンス機能について、どのような活動の中でそれが形成されるのか、Risk事象への取り組み過程から検討を行った。セーフコミュニティは安全を保障する状態を示すものではなく、現在進行形で取り組みを行っている状態である。特定の地域課題に対し、住民に明確な問題意識・解決志向を養成・維持していくことで、安心・安全な地域環境作りを図ることを目的にしており、セーフコミュニティは各地域特徴を踏まえた体制をとっている。特定のRisk事象に対して、そのコミュニティに参加している住民間が共通の問題意識を形成することで、Risk事象へのレジリエンス機能(対処策)を獲得できる。コミュニティにおけるレジリエンス機能は、地域の連携力、コミュニケーション能力、問題解決力等を意識していくための概念であるが、セーフコミュニティはそれ自体、レジリエンス機能を有する形態であることがわかった。