- 著者
-
松浦 智和
- 出版者
- 名寄市立大学保健福祉学部社会福祉学科
- 雑誌
- 名寄市立大学社会福祉学科研究紀要 (ISSN:21869669)
- 巻号頁・発行日
- no.10, pp.11-27, 2020-03-31
【要約】世界的にメンタルヘルスの促進の重要性が議論される時勢であるが、本稿ではわが国のメンタルヘルスの主要課題の1つである自殺とその周辺課題について、先行研究や政府公刊の白書等、意識調査の結果を中心に考察を試みるとともに、自殺対策についての提言を述べた。わが国では1998年に自殺者が急増して以降自殺者が3万人を超える状態が続いた。2010年以降は9年連続の減少となっており、2018年は20,840人で前年に比べ481人(2.3%)減少したものの以前深刻な状況にある。特に、自殺総合対策大綱では、重点施策のひとつとして、「子ども・若者の自殺対策の更なる推進」が掲げられているが、先行研究を概観すれば、若年層は自殺念慮が最も高い世代であり、社会に絶望を感じながら、自己有用感が低いまま、これまでの人生で遭遇したいじめなどのつらい経験を抱えながら、レッテル貼りを警戒して専門職に相談することをあえてせず、家族や友人などの身近な“知った仲”によるサポートでギリギリ暮らしている実情が示唆された。