著者
川嶋 正志
出版者
学校法人 開智学園 開智国際大学
雑誌
開智国際大学紀要 (ISSN:24334618)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.15-24, 2022 (Released:2022-04-28)

社会の中で「コミュニケーション能力」という言葉が多様化し、強い力を持つようになった。社会学の視点から「コミュニケーション能力」について考えると、コミュニケーションの高度化と個人化という状況が見えてくる。同様の問題は国語科教育でも起きており、過剰な「メタ認知」への注目によって求められる知識や技能が高度化していく事態を招いている。従来の国語科教育の理論的基盤はハーバーマスの理論であったが、これまでもその理論の不十分さが指摘されてきた。そこで、本論ではハーバーマスと論争を繰り広げていたN.ルーマンに注目する。高度化していく「コミュニケーション能力」とは別の視座を得るため、ルーマンのコミュニケーション理論に注目し、「コミュニケーション・システム」という新たな捉え方を提案する。 ルーマンのコミュニケーション理論の特徴として注目した点は①「移転」というメタファーからの脱却、②「三重の選択」、③「二重の偶発性」の3点である。まだ課題は山積しているが、わかりあえないことを前提とした新たなコミュニケーション観には可能性があるように考えられる。
著者
寺本 妙子
出版者
学校法人 開智学園 開智国際大学
雑誌
開智国際大学紀要 (ISSN:24334618)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.25-37, 2022 (Released:2022-04-28)

本研究では,キャリア教育における主体と自己に関する概念整理をおこない,教育実践上の課題について検討した。OECD 2030プロジェクトにおけるエージェンシーの概念にはラーニング・コンパスが目指すウェルビーイングに向かう方向性が見出され,学習指導要領における主体には一元的な自己観が反映されていた。教育哲学,心理学,社会学における主体や自己の概念には,関係性や公共性との関連付けや,多元的かつ構成的な性質が確認された。これらの概念を整理した枠組みを提案し,キャリア教育の実践上の課題について検討した。
著者
八尾坂 修
出版者
学校法人 開智学園 開智国際大学
雑誌
開智国際大学紀要 (ISSN:24334618)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.17-34, 2021 (Released:2021-03-15)

教育長の離職の構造要因として、「学区の特徴」、「教育委員会の特徴」、「教育長の特性」、「教育長の職務遂行能力」の 4 つのカテゴリーがある。これらのカテゴリーに存在する要因(例えばストレス、コンフリクト、プレステージ、給与、有能さ、子どものテスト成績など)が複合的に教育長自身の離職の決断、あるいは教育委員会による雇用満了の決定という、離職をもたらしている。 教育長のキャリア定着とともにリーダーシップ能力向上、社会的役割の促進、学区の改善効果をねらいとして、現職教育長、特に新任教育長の職能開発の機会が図られてきた。通常は教育長免許状の更新・上進制と連結して大学での単位取得や州・学区主催の研修会が運営されている。 ケンタッキー州が画期的な試みと評されるのは、インダクションプログラムの体系的な構造化である。しかも州独自のリーダーシップに焦点化した 7 つの有効性基準に基づき、新任教育長が自己評価を行い、自身のパフォーマンスのエビデンスを提供する点に特徴がある。
著者
寺本 妙子
出版者
学校法人 開智学園 開智国際大学
雑誌
開智国際大学紀要 (ISSN:24334618)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.19-33, 2020 (Released:2020-04-01)

教員養成学部の学生のキャリア意識(人生における多様な役割に対する関心や態度)の醸成を促進するキャリア支援プログラムの構築を目指し,基本情報を得る目的でアンケート調査を実施した。教育学部 1 年生を対象に,時間的展望,アイデンティティ,進路選択に関する自己効力,養護性,次世代育成力について測定し,これらの要因間の関連性について検討した。肯定的な時間的展望が他の要因の高い水準と関連することが示され,肯定的な時間的展望やそれと関連する自己形成の促進の重要性が示唆された。これらの結果を踏まえ,支援プログラムの内容とその評価について考察を試みた。
著者
石田 修一
出版者
学校法人 開智学園 開智国際大学
雑誌
開智国際大学紀要 (ISSN:24334618)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.95-126, 2016-03-01 (Released:2017-11-20)

2005年4月から現在まで柏市教育委員会に勤務,市内42校の小学校及び中学校20校,高等学校1校の音楽教育について指導助言をおこなってきた。この10年間で子どもたちを取り巻く環境は大きく変わり,価値観が多様化,音楽活動にあてられる時間は半減している。その中で,より短時間で教育効果が上がった指導方法について考察する。 最初に時間の使い方を見直す。子どもたちの活動をじっくりと観察すると,無駄な動きが見えてくる。その無駄を改善することによって,練習時間を年間数十時間増やすことができる。次に効果的な実践として1.「倍音を感じて!意味のある基礎練習をおこなう」2.「個々の奏法向上教育方法改善」3.「システム化された合奏指導法」4.「コンクールの練習方法・ホール全体を上手に響かせる方法」5.「簡単なスコアリーディング方法」6.「指揮する自分の姿を自分の目で見て!感じて」7.「演奏者から離れた場所で聴いてみる」8・9.「音楽の授業との連携」を実践報告。 これらの実践報告をもとに短時間で教育効果を上げるための具体的方法や初心者の効果的指導方法について子どもの興味関心を高めるとともに,自ら音楽表現するよろこびが体感できる教育方法をシステム化した。