著者
八尾坂 修
出版者
学校法人 開智学園 開智国際大学
雑誌
開智国際大学紀要 (ISSN:24334618)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.75-86, 2020 (Released:2020-04-01)

アメリカにおける教育長の養成・研修に着目すると、歴史的に免許資格と養成、更新・上進制の連結が特徴的である。免許資格要件の特徴として以下の点を見出すことができた。①発行される免 許状は包括的な行政免許状あるいは教育長固有の免許状である。②博士号あるいは教育スペシャリスト学位(博士論文を提出する必要のない准博士号)取得の要請。③教職経験や行政経験を要求しているのが歴史的特徴。④インターンシップ充実への州間差異。⑤教育長独自のテストを要求する州の存在。⑥上進制を導入する州(10 州)のなかで更新を認めず上位の免許取得を求める州の存在。⑦伝統的な大学院養成プログラムに対して州教育長会のような専門職団体、民間によるオルタナティブ養成・研修の存在。教育長養成プログラムの課題として、ア.入学募集、選抜、入学、イ.プログラムの目標・哲学、ウ.養成の核となるコースカリキュラム内容、特に実地体験の重視、エ.テニュア教員の存在といった基本的な視点、要素を共通認識して高める質保証が養成関連機関に求められる。
著者
八尾坂 修
出版者
学校法人 開智学園 開智国際大学
雑誌
開智国際大学紀要 (ISSN:24334618)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.17-34, 2021 (Released:2021-03-15)

教育長の離職の構造要因として、「学区の特徴」、「教育委員会の特徴」、「教育長の特性」、「教育長の職務遂行能力」の 4 つのカテゴリーがある。これらのカテゴリーに存在する要因(例えばストレス、コンフリクト、プレステージ、給与、有能さ、子どものテスト成績など)が複合的に教育長自身の離職の決断、あるいは教育委員会による雇用満了の決定という、離職をもたらしている。 教育長のキャリア定着とともにリーダーシップ能力向上、社会的役割の促進、学区の改善効果をねらいとして、現職教育長、特に新任教育長の職能開発の機会が図られてきた。通常は教育長免許状の更新・上進制と連結して大学での単位取得や州・学区主催の研修会が運営されている。 ケンタッキー州が画期的な試みと評されるのは、インダクションプログラムの体系的な構造化である。しかも州独自のリーダーシップに焦点化した 7 つの有効性基準に基づき、新任教育長が自己評価を行い、自身のパフォーマンスのエビデンスを提供する点に特徴がある。
著者
椋本 洋 八尾坂 修
出版者
奈良教育大学教育学部附属教育実践研究指導センター
雑誌
教育実践研究指導センター研究紀要 (ISSN:09193065)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.51-64, 2000-03-31

生徒指導は生徒一人一人が「日々いかに生きるか」という課題に、具体的にかかわりながら、彼らの自己実現を援助していく営みである。急激な社会の変化の波にさらされる今日、生徒達の在り方・生き方は、きわめて多様であり複雑である。そのような現状の中、いわゆる問題行動は、「深刻化する少年非行―戦後第四の上昇局面」といわれるように増加しており、その行動パターンにも変化が見られる。このような状況の中、「学校は心を育てる場に」と期待されている。高等学校で実施されている指導方法としてほ、問題行動を起こした生徒に対する「懲戒」という対処療法的指導と道徳教育やカウンセリングなど時間をかけた原因療法的指導があるが、実際には、前者の指導に追われる学校が多くならざるを得ない現状がある。そこで、本稿では、取り上げられることの少ない「懲戒」に焦点をあわせ、その問題点を明確にし、さらに近年家庭の教育力の低下などによって増加しつつある「学内停学」の実態を調査し、その課題を考察し課題解決への方向を明らかにしたい。
著者
八尾坂 修
出版者
国立教育研究所
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

1各州における教員免許状の効力(有効期間)と現職研修の対応調査研究の結果得られた知見・成果は次の通りである。(1)今日卒業後即座に終身免許状を発行する州は3州(ニュー・ジャージー、マサチューセッツ、ミズーリ)に過ぎず、他の州はいずれも免許状の更新制、上進制を採用している。他のタイプとしては3タイプが考えられた。第1のタイプは有効期限付きの1種類の免許状を発行し、しかも一定の更新要件を課そうとするものである。第2のタイプは、等級別の免許状を上進させるたとによって最終的に終身免許状取得の道を開くものである。第3のタイプは終身免許状を発行することなく、有効期限付きの免許状を教職経験のみならず、一定の単位あるいは修士号取得等により、更新あるいは上進させようとするものである。(2)更新・上進要件として、大学(院)での単位履修のみならず、地方学区主導の研修プログラムを義務づけあるいは代替可能にしている州が多くの州に存するようになっていることはアメリカにおける免許制度と現職研修の対応における一つの変革とも指摘できる。(3)以上の結果を日本と比較してみると、わが国でも1989年4月以降、上位の免許状については在職年数のみによって取得することは適当でないとし現職研修が要求されたことからしてアメリカと同一方向を歩むことが予測され得る。2今後の研究の展開各州個別あるいは全州的にとらえた免許状の更新・上進制と現職研修の関連性の実態(免許状の名称、種類、有効期間、更新・上進要件、具体的な現職教育内容、現職教育の主体等)を明白にすること。さらにはこの研究対象を一般教員のみならず教育官吏職(校長等)にも視点を広げることが今後の研究課題である。