- 著者
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山田 徹
- 出版者
- 特定非営利活動法人 日本電磁波エネルギー応用学会
- 雑誌
- 日本電磁波エネルギー応用学会機関誌 (ISSN:24341495)
- 巻号頁・発行日
- vol.2, no.2, pp.17-20, 2016 (Released:2019-07-11)
水やアルコールなど大きな分極を持つ化合物はマイクロ波エネルギーをよく吸収し,結果として温度上昇をもたらす。1986 年に始まった有機合成化学反応1) に対するマイクロ波の利用はもっぱらこの原理に基づくもので,マイクロ波照射は効果的な加熱手段であった。すなわち,化学反応は迅速な反応系の温度上昇によって加速され,マイクロ波の「熱的効果」とされる。一方,単純な加熱効果だけでは説明しきれない現象も報告されており、「非熱的効果」または「マイクロ波特異効果」といわれ,永らく議論の対象となっている。マイクロ波の熱的効果を利用するには分極の大きな反応溶媒を用いるが,分極の小さい溶媒を用いるとマイクロ波エネルギーは反応基質に直接届けられ「マイクロ波特異効果」が観測されることが期待される。本稿では不斉合成反応における「マイクロ波特異効果」の実験的な検証について紹介したい。