著者
本図 愛実
出版者
宮城教育大学教職大学院
雑誌
宮城教育大学教職大学院紀要 = Bulletin of Miyagi University of Education Graduate School for Teacher Training (ISSN:24354457)
巻号頁・発行日
no.4, pp.29-41, 2023-03-31

本稿は、戦前-戦後の「連続-非連続」を視点としつつ、師範学校附属小学校の機能について、「経験交流と触発の拠点」と捉え、戦後の制度が「非連続」となるなかにあっても、「連続」する規範の形成に関わっていることを明らかにしようとしている。そのため、宮城県師範学校を卒業し、同附属小学校に勤務した経験をもつ及川平治をめぐるソーシャル・キャピタルについて検討している。ロバート・パットナムの定義に依拠するなら、ソーシャル・キャピタルとは、「個人間のつながり、すなわち社会的ネットワーク、およびそこから生じる互酬性と信頼性の規範」である。それらは、外部性を有しコミュニティに影響を及ぼすため、私財でもあるが公共財でもあるとされる。大正新教育を牽引した及川の動的教育論の原点には、附属小学校における単級学級での経験がある。最晩年の活動には1936(昭和11)年からの仙台市教育主事兼視学および仙台市教育研究所所長としての取組があった。それらとその間の及川の就職や動的教育論の普及は、宮城県師範学校附属小学校を媒介とする外部性を有する社会的ネットワークがあり、それは「この子ども」、「すべての子供等の為に」という規範を包含している。この規範は、戦後の教師たちにも継承されていった。
著者
菅井 裕行 松崎 丈
出版者
宮城教育大学教職大学院
雑誌
宮城教育大学教職大学院紀要 = Bulletin of Miyagi University of Education Graduate School for Teacher Training (ISSN:24354457)
巻号頁・発行日
no.4, pp.145-157, 2023-03-31

本研究では、ろう重複障害のある子どもを対象とした授業実践にコンサルタントとして係わった実践から、コミュニケーション支援を中心とする授業レフレクションの意義とその方法について検討した。ろう重複障害のある子どもの多くは、音声言語のみによる言語獲得に相応の困難を有し、音声唯一ではない多様なコミュニケーション方法の獲得と活用が必要である。このようなろう重複障害のある子どもを対象とする授業においては、個別的に特徴や特有の困難を把握し具体的なコミュニケーション支援を基礎とする係わりが重要となる。実際の授業リフレクションを通じて、日々のコミュニケーション場面を微視的に分析する方法や、ろう重複障害のある子どものコミュニケーション支援に役立つ授業リフレクションの意義や在り方を検討した。