著者
内藤 壮俊 長谷川 禎彦 松田 佳希 田中 宗
雑誌
量子ソフトウェア(QS) (ISSN:24356492)
巻号頁・発行日
vol.2022-QS-5, no.23, pp.1-9, 2022-03-17

量子コンパイラは,論理回路として表現された量子プログラムを受け取り,デバイス上で実行可能かつ論理的に等価な回路を合成するソフトウェアである.近年主流となっている NISQ デバイスは,物理的に接続された量子ビット間でしか量子ゲートを作用させられない,操作によって生じたエラーが蓄積するといった特性を有している.そのため NISQ デバイスを対象とする量子コンパイラは,接続関係の制約を満たしながら,回路のコストすなわちゲート操作回数が少なくなるように回路を出力しなければならない.このコンパイル操作において最も重要なタスクは,論理回路中の量子ビットをデバイス上の量子ビットに割り当てるタスクである.これは NP 困難であり,出力回路のコストに大きく影響する問題となっている.私たちの提案する量子コンパイラ「ISAAQ (ISing mAchine Assisted Quantum compiler)」は,出力回路のコストを QUBO モデルとして表現し,イジングマシンを用いた解の探索,およびその解に基づいた回路合成を実行する.ISAAQ は,実行結果に基づいた QUBO モデルの更新,複数イジングマシンによる並列実行,デバイス上の経路を考慮したコスト削減といった,他にはない特徴を多く持っている.IBM QX5 および IBM QX20 を対象とした実験では,ISAAQ は既存の QUBO 手法やその他のアルゴリズムよりも低コストな回路を出力できていることが確認され,本提案手法の有効性が示された.
著者
新居 智将 鈴木 泰成 徳永 裕己
雑誌
量子ソフトウェア(QS) (ISSN:24356492)
巻号頁・発行日
vol.2022-QS-5, no.27, pp.1-10, 2022-03-17

表面符号は現在量子誤り訂正符号として最も注目されているものの 1 つである.表面符号の復号方法の 1 つに,エラーの推定を最小重み完全マッチング問題に帰着して復号する方法がある.量子ビットによってエラーが起きている確率が均一でない場合,重みが不均質な最小重み完全マッチング問題を解くことで復号の精度が向上することが知られている.しかし,その際に必要な計算量は確率が均一である場合に比べて大きくなってしまう.この発表では,一定の仮定の下でフェニック木を用いることで,最小重み完全マッチング問題による表面符号の復号で必要となる計算量を削減する方法を提案する.