著者
多和田 雅師 田中 宗 松田 佳希 楊 天任
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.e15-e21, 2021-03-15

次世代アクセラレータと呼ばれる量子技術や古典技術を用いた新原理の計算機が期待されている.これら次世代アクセラレータは種類ごとに使用方法が異なり, 計算分野の得意不得意が存在する. 使用には専門知識が必要でありコストが高いため, 各アクセラレータ固有の使用法や性質を考慮し,プログラムの部分ごとに適切に割当するソフトウェアが要望されている. 本稿では,次世代アクセラレータの種類と活用事例,および適切にアクセラレータを使用するソフトウェアとその要素技術の研究動向を紹介する.
著者
内藤 壮俊 長谷川 禎彦 松田 佳希 田中 宗
雑誌
量子ソフトウェア(QS) (ISSN:24356492)
巻号頁・発行日
vol.2022-QS-5, no.23, pp.1-9, 2022-03-17

量子コンパイラは,論理回路として表現された量子プログラムを受け取り,デバイス上で実行可能かつ論理的に等価な回路を合成するソフトウェアである.近年主流となっている NISQ デバイスは,物理的に接続された量子ビット間でしか量子ゲートを作用させられない,操作によって生じたエラーが蓄積するといった特性を有している.そのため NISQ デバイスを対象とする量子コンパイラは,接続関係の制約を満たしながら,回路のコストすなわちゲート操作回数が少なくなるように回路を出力しなければならない.このコンパイル操作において最も重要なタスクは,論理回路中の量子ビットをデバイス上の量子ビットに割り当てるタスクである.これは NP 困難であり,出力回路のコストに大きく影響する問題となっている.私たちの提案する量子コンパイラ「ISAAQ (ISing mAchine Assisted Quantum compiler)」は,出力回路のコストを QUBO モデルとして表現し,イジングマシンを用いた解の探索,およびその解に基づいた回路合成を実行する.ISAAQ は,実行結果に基づいた QUBO モデルの更新,複数イジングマシンによる並列実行,デバイス上の経路を考慮したコスト削減といった,他にはない特徴を多く持っている.IBM QX5 および IBM QX20 を対象とした実験では,ISAAQ は既存の QUBO 手法やその他のアルゴリズムよりも低コストな回路を出力できていることが確認され,本提案手法の有効性が示された.