著者
西 明博 菅家 智史
出版者
一般社団法人 AYAがんの医療と支援のあり方研究会
雑誌
AYAがんの医療と支援 (ISSN:24359246)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.22-26, 2022 (Released:2022-02-25)
参考文献数
17

プライマリ・ケアとは、患者の近くにあって年齢や疾患に関わらずありとあらゆる健康問題に対処する医療である。がんの罹患数の増加や生存率の向上に伴い、プライマリ・ケアにおいてもがんとの関わりは当たり前のことになりつつある。初期治療を終えたがんサバイバーは、治療の合併症による身体的・精神的影響に加え、就労・金銭・家族関係の問題といった社会的影響に直面するため、プライマリ・ケア医も含めた多職種による包括的な関わりが理想とされる。AYAがん患者に対しても、プライマリ・ケアは、ライフステージ毎に生じる様々な課題に対して、気軽に相談できる窓口として、生涯にわたってケアを提供できる可能性がある。しかし、プライマリ・ケア側の受け入れ体制が整っていないことや、AYAがん患者はかかりつけ医を持たない傾向があるといった課題があり、AYAがん診療に十分に関われていないのが現状である。解決するためには、プライマリ・ケア向けの診療ガイドラインや学習コンテンツの作成、がん専門医・専門病院との連携体制の構築、プライマリ・ケアの役割や有用性に関する啓発が必要である。プライマリ・ケアもAYAサポートチームの一員として、AYAがん患者を地域で支える社会の実現に向けて一緒に取り組んでいきたい。
著者
杉本 公平 正木 希世 竹川 悠起子 新屋 芳里 岩端 威之 小泉 智恵 岡田 弘
出版者
一般社団法人 AYAがんの医療と支援のあり方研究会
雑誌
AYAがんの医療と支援 (ISSN:24359246)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.19-27, 2023 (Released:2023-03-04)
参考文献数
17

2020年度より不妊治療の保険適用が開始された。政府は同時に「がん治療に伴う不妊への助成」とともに「里親制度・特別養子縁組制度の普及」を進めていく方針を示している。日本の里親制度・特別養子縁組制度の普及は欧米先進国と比較して普及が遅れているとされている。両制度とも子供を家庭に迎えたいと望む親のための制度ではなく、要保護児童(様々な事情により実親の元での養育が困難な児童)が家庭養護の中で成育するための制度であることを認識しておく必要がある。両制度には親権や法的親子関係などの違いがあるが、実際には多様な家族像があることを理解する必要がある。AYAがんサバイバーが里親・養親になることについて、日本の児童相談所や民間のあっせん団体は決して否定的ではないが、個別的な判断が重要であると考えている。埼玉県里親会で行われたアンケート調査では、里親カップルの約6%がどちらかが、がんサバイバーであった。情報提供については早い時期に簡単に情報提供を行い、後から間接的に情報を手に入れることができるリーフレットなどを準備することが重要であると考えられた。AYAがんサバイバーに対しても同様の準備が必要であると考えられた。