著者
西 明博 菅家 智史
出版者
一般社団法人 AYAがんの医療と支援のあり方研究会
雑誌
AYAがんの医療と支援 (ISSN:24359246)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.22-26, 2022 (Released:2022-02-25)
参考文献数
17

プライマリ・ケアとは、患者の近くにあって年齢や疾患に関わらずありとあらゆる健康問題に対処する医療である。がんの罹患数の増加や生存率の向上に伴い、プライマリ・ケアにおいてもがんとの関わりは当たり前のことになりつつある。初期治療を終えたがんサバイバーは、治療の合併症による身体的・精神的影響に加え、就労・金銭・家族関係の問題といった社会的影響に直面するため、プライマリ・ケア医も含めた多職種による包括的な関わりが理想とされる。AYAがん患者に対しても、プライマリ・ケアは、ライフステージ毎に生じる様々な課題に対して、気軽に相談できる窓口として、生涯にわたってケアを提供できる可能性がある。しかし、プライマリ・ケア側の受け入れ体制が整っていないことや、AYAがん患者はかかりつけ医を持たない傾向があるといった課題があり、AYAがん診療に十分に関われていないのが現状である。解決するためには、プライマリ・ケア向けの診療ガイドラインや学習コンテンツの作成、がん専門医・専門病院との連携体制の構築、プライマリ・ケアの役割や有用性に関する啓発が必要である。プライマリ・ケアもAYAサポートチームの一員として、AYAがん患者を地域で支える社会の実現に向けて一緒に取り組んでいきたい。
著者
菅家 智史 森 冬人 坪井 聡 若山 隆 葛西 龍樹
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.191-197, 2019-12-20 (Released:2019-12-27)
参考文献数
21

目的:時間外受診の適正化は医療システムにおける大きな問題である.全年齢層を対象に時間外受診の目安を示したハンドブックを自治体全戸へ配布したことが住民の時間外受診件数に与えた影響を検討する.方法:2011年7月福島県只見町は住民全戸へ時間外受診の目安を記載したハンドブックを作成し配布した.町唯一の医療機関である国民健康保険朝日診療所の2010年1月から2012年12月における1ヶ月あたり時間外受診件数を中断時系列分析を用いて解析した.結果:ハンドブック配布前の傾きは0.0071 (95%信頼区間 -0.011,0.025)であったが,ハンドブック配布に伴う傾きの変化は -0.0061 (-0.034,0.022)であった.結論:医療機関受診の目安を解説したハンドブックを住民全年齢層を対象に配布した施策では,時間外受診件数の有意な変化は認めなかった.
著者
澤 憲明 田中 啓広 菅家 智史 武田 仁 鵜飼 友彦 若山 隆 葛西 龍樹
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.308-316, 2011 (Released:2015-05-30)
参考文献数
20

目的 : 英国家庭医学会の新しい後期研修プログラム・専門医認定制度 (以下nMRCGPと略す) を紹介する. そのnMRCGPと日本プライマリ・ケア連合学会認定家庭医療後期研修プログラム・専門医認定制度を比較検討し, 日本の家庭医療専門医教育発展に向けた課題を抽出する. 方法 : nMRCGPの研修資料, 及びその参考文献をレビューし, そのレビューをもとに東北地方の家庭医療後期研修医・指導医でディスカッションを行った. 結果 : 英国と日本の家庭医療後期研修プログラム・専門医認定制度の比較から日本の家庭医療専門医教育の発展に向け3つの課題が抽出された. 1) 日本における新しい「家庭医」の定義の必要性, 2) 形成的評価としてのポートフォリオの重要性, 3) ポートフォリオ審査における明確な評価項目と基準の必要性. 結語 : nMRCGPの背景・概要の説明, 及び日本の家庭医療専門医教育の発展に向けた課題の抽出とその考察を行った.