著者
木村 友美
出版者
京都大学ヒマラヤ研究会; 京都大学霊長類学・ワイルドライフサイエンス・リーディング大学院; 京都大学ヒマラヤ研究ユニット
雑誌
ヒマラヤ学誌 : Himalayan Study Monographs (ISSN:09148620)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.92-101, 2017-03-28

特集2: フィールド医学 = Special Issue 2: Field Medicine 本誌公刊にあたっては、京都大学学士山岳会、京都大学「霊長類学・ワイルドライフサイエンス」・リーディング大学院からの助成をうけました。 本稿は、総合地球環境学研究所の研究プロジェクト「人の生老病死と高所環境―『高所文明』における医学生理・生態・文化的適応」(代表奥宮清人)の一環として、ヒマラヤ地方の北西端に位置するインド・ラダーク地方(以下、ラダーク)において行った医学・栄養学調査(2010年、2011年)から、特に都市部に移住したチベット人に焦点をあてたフォローアップ調査(2013、2014年)について報告するものである。著者らは、2010年9 月にラダークの中心都市レーで、2011年7 月にはラダークの遊牧地域のチャンタン高原でメディカルキャンプを行い、その医学調査・栄養学調査の結果、高血圧や糖尿病といった生活習慣病はチャンタン高原に暮らす遊牧民に比べて、都市の住民で多く、近代化による食や生活様式の変化の影響について示唆している1~3)。そこで、生活習慣病を有するレーの住民にはどのような生活背景や食の実態があるのかを調査するため、2013年、2014年に、生活習慣病のフォローアップとして住民宅への家庭訪問を実施した。2011年のレーでの健診は、チベット難民居住区を含むチョグラムサル地区にて行ったため、健診を受診した対象者309 人のうち多くは、高原から移住した元遊牧民のチベット人であった注1)。遊牧民の定住化、とくに都市への移住による生活様式の大きな変化が、摂取エネルギーの増加と消費エネルギーの減少に影響したことが考えられる。そこで、本稿では、遊牧民の都市への移住に注目し、生活習慣病を有している移住者の食と生活背景の事例を報告する。 This article describes the lifestyle of Tibetan refugees who have settled in Leh town in Ladakh, India, and especially focuses on dietary changes from their nomadic lifestyle. These case reports are based on the follow-up research which had carried out for the Tibetan elderly who had diagnosed diabetes and hypertension by the previous medical check-up done in 2010 and 2011. Authors had reported the prevalence of lifestyle-related diseases was higher among the elderly living in Leh town than that among living in nomadic area called Changtang plateau. Through the interview, the follow-up research also revealed how they perceive their current life after moved to the town from nomadic life as well as the change of daily diet and physical activity. The roles of the elderly are less in town compared to those in the mountain life with a lot of technical tasks such as spinning a yarn from yak hair, milking and processing dairy.

言及状況

Twitter (1 users, 1 posts, 0 favorites)

JAIRO | 都市に定住したチベット遊牧民の食と生活習慣病 -インド・ラダーク地方の難民居住区での調査から- (特集2: フィールド医学) https://t.co/BZadSsyJOP

収集済み URL リスト