著者
都築 繁幸 長田 洋一
出版者
愛知教育大学障害児教育講座
雑誌
障害者教育・福祉学研究 (ISSN:18833101)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.131-143, 2016-03 (Released:2017-03-28)

過去10年間で学会誌や大学の研究紀要等で掲載された論文のうち,小学校で行われた対人関係の向上に向けた支援という観点から限定的に分析した。27編を分析対象とし,通常の学級,通級指導教室,特別支援学級のそれぞれの場所でどのような介入が行われたかを検討した。その結果,次のような傾向が認められた。通常の学級全体の場では,第一次的な介入が多く見られた。クラスワイドな支援を行う利点としては,同じ学級の中に似たような行動上の問題を抱えた児童が複数人いる場合に有効であり,対象児以外の児童にとっても有益であることが示された。第二次的な介入や第三次的な介入を行っていく場所が通級指導教室や特別支援学級であるが,第二次的な介入として小集団SST指導を実施していることが多く,個別システムによる第三次的な介入はほとんど行われていなかった。効果の面から見ると「クラスワイドな支援」は他の児童や学級全体の改善および対象児童の集団参加や他児との環境調整に有効であり,「機能的アセスメント」,「コンサルテーション」,「校内支援体制」は対象児童の不適切行動の減少と適切行動の増加に有効であり,「認知行動療法」は対象児童の自尊心の高揚に有効であった。通級指導教室の小集団SST指導は小集団内での仲間関係の形成に有効であり,特別支援学級における小集団SST指導は,自発性の促進に有効であることが示された。今後,介入を効果的に行っていくためには,対象児童の行動問題の種類や改善の目標によって効果が上がると思われる技法を採択していくことが示唆された。

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