著者
中分 遥 佐藤 浩輔
雑誌
じんもんこん2022論文集
巻号頁・発行日
vol.2022, pp.119-124, 2022-12-02

道徳神仮説によれば, 超自然的な行為者や罰への信念を持つことは、 社会的な協力行動を維持 することに役立ち、人類の社会的複雑性を高める動因となる. これまで体系的な研究も含め、他の人 間に対して危害を加えることに対する超自然罰に関する研究は数多く行われてきたが, 一方で自然に 対して危害を加えることに対する超自然罰に関する計量的な分析はほとんど行われてこなかった。こ うした信念は、環境問題や地域のコミュニティーの持続可能な発展に役立っていた可能性がある. 本 研究では,日本の民間伝承のデータベースに登録されている, 超自然的な報復である 「タタリ」に関 連した資料について分析した.分析の結果,「タタリ」 と自然に関連する単語 (e.g., 木・動物・山の 神)が高い頻度で共起した. また, 報復は個人ではなくより大きな単位 (c.g.. 家) に対して与えられ る傾向についても示唆された.これらの結果は日本のタタリ伝承が 「報復する自然」 観を内包してい ることを支持するものである.
著者
武富 有香 松田 智裕 須田 永遠 宇野 毅明
雑誌
じんもんこん2022論文集
巻号頁・発行日
vol.2022, pp.213-220, 2022-12-02

#metoo 運動以降,ソーシャルメディア上にあらわれるようになった誹謗中傷のメカニズムとオンライン上の言説空間の全体像を理解するために,性暴力のトピックについて語る人々の書きぶりや言い回しにそって語りを類型化し,コメントにラベルをつけて分析を試みる.まず,性暴力の告白やその暴力の被害者に関するYahoo!Japan ニュース上の記事に対するコメントを読み,類型を作成する.この類型にしたがってコメントにアノテーションを行い結果を観察すると,得られた結果と社会学および哲学の既存研究の知見との対応が見出せると同時に,その既存研究に新たな仮説を付け加えることができる.本研究では質的に読まれていたコーパスを量的に扱えるようにする情報学的なアプローチをとる一方で,類型化とアノテーションの作業,すなわち精緻にテクストを読む技術が必要な部分は人手で行う.この手法を用いることで類型に質的な深みを与えることができ,この明確な解釈性を持った類型によってコーパスを”測る”ことが可能となる.
著者
杉山 佳奈美 久保山 哲二 三輪 洋文 宇野 毅明
雑誌
じんもんこん2022論文集
巻号頁・発行日
vol.2022, pp.289-294, 2022-12-02

選挙公報のテキストデータに対して文書クラスタリングを適用した. クラスタリング手法には、 文書間類似度により形成されるネットワーク構造から密な部分構造を抽出するマイクロクラスタリン グと、代表的なトピックモデルである LDAの2種類を利用した. クラスタリング結果を比較したとこ ろ, マイクロクラスタリングではトピックの解釈が容易な解像度が高いクラスタ, 特に政党に関して より類似度が高いクラスタが多数得られることが示された. さらにマイクロクラスタリングで抽出さ れた文書クラスタを元に回帰分析を行い, 個人票志向の候補者の傾向を解析した. その結果, LDA を 用いた先行研究にあった人手によるトピック解釈の過程を経ることなく, 選挙制度改革前後の変化や 政党ごとの特色について先行研究の主張を支持する結果が得られた.
著者
大田 翔貴 村井 源
雑誌
じんもんこん2022論文集
巻号頁・発行日
vol.2022, pp.85-90, 2022-12-02

怪談作品は古くから存在し、 怪談にまつわる研究もまた古くから存在している. 本研究は, 怪談 を読むことで感じる奇妙さや怖さの要因を解明するため, 怪談に登場する怪異という特徴的なキャラ クターに着目して怪異の特徴分析を行った. また, 分析の一つとして怪異特徴について Web上に投稿 されている怪談と書籍として販売されている怪談の比較も行った. 分析には,N-gram 統計や因子分析 を利用し、結果として怪異の行動パターンやメディア間で生じる怪異特徴の差異が明らかになった.