著者
松岡 和生
出版者
日本イメージ心理学会
雑誌
イメージ心理学研究 (ISSN:13491903)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.39-45, 2020 (Released:2022-03-07)
参考文献数
44

The sensory-cognitive characteristics underlying Miyazawa Kenjiʼs literary works often include eidetic images,synesthesia, and fantasy-proneness. This report aimed to examine Kenji's sensory-cognitive characteristics, based on the findings in our studies that eidetic images, synesthesia, and fantasy-proneness could share a common neural and psychosomatic basis. Miyazawa Kenji could be a typical hyperphantasia(Zeman, 2015), that is, a person with peculiar imagination according to recent research in cognitive psychology and brain science regarding imaginative abilities.
著者
畠山 孝男
出版者
日本イメージ心理学会
雑誌
イメージ心理学研究 (ISSN:13491903)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.1-37, 2019-10-31 (Released:2020-03-18)
参考文献数
284

本稿では自己報告型の主観的イメージテストによって測定されるイメージ能力が,認知的課題ないしは事態をどのように予測するかについて,生理,知覚,学習・記憶,想記,思考,社会的過程に分けて研究の展望を試み,それぞれの領域ないしテーマごとに概括を行いつつ筆者のコメントを付する。結果的に知覚と学習・記憶の領域が中心となる。イメージテストとの関係が豊富に示され,テストの予測力を支持する知見がかなり集積されている状況を見ることができる。鮮明性を問題とした研究が多いが,統御性,常用性(表象型),没入性も取り上げられ,それぞれのテストが予測力を発揮することが知られる。その中で,刺激入力時の特性,知覚との機能的等価性,情報量の多さ,イメージ生成の速さといったイメージの基本的特性は,鮮明性が中心的に担っている。学習・記憶との関係においては,材料の複雑度や処理困難度,意図学習か偶発学習か,イメージ方略以外の方略の適用可能性などが,決定的に重要な要因である。TVIC の測る統御性は,単なるイメージ特性を越えて,認知的・適応的柔軟性に及んでいる。主観的イメージテストが見せる様々な予測力は,イメージが単なる主観的現象にとどまらない実際的な機能を担っていることを明瞭に示していて,かつて展開された主観的イメージテストの妥当性をめぐる論争や,さらにはいわゆるイメージ論争に対して,一つの答えを提供していることが主張される。また,イメージは現象的にも機能的にも多面性を持っていて,主観的テストは認知過程における機能的違いをそれぞれのテストの特性に応じて反映していることが結論され,イメージ個人差の研究はイメージ能力の機序を問題とすべき段階であることが提案される。
著者
宮崎 拓弥 本山 宏希 菱谷 晋介
出版者
日本イメージ心理学会
雑誌
イメージ心理学研究 (ISSN:13491903)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.48-59, 2003
被引用文献数
1

本研究では,名詞,および形容語(形容詞・形容動詞)の感情刺激としての標準化データを提供することを目的とし,快─不快の次元について標準化を行った.Bradley and Lang(1999),Brown and Ure(1969),Rubin and Friendly(1986)をもとに,263 項目が選定された名詞の標準化データは,源泉となったそれぞれの調査データとの間に評定値,順位ともにかなり高い一致が見られた.他方,126 項目からなる形容語の標準化データは,対象が形容詞,形容動詞の2品詞に限定されているため,名詞句や動詞句といった様々な表現が混在したデータとは異なり,語彙決定課題や単語同定課題などの実験場面で容易に利用が可能となるデータが得られた.The purpose of this study was to obtain normative data on the positive-negative dimension of emotional nouns and epithets (adjectives and adjective verbs). We obtained data on 263 nouns that were selected on the basis of studies by Bradley and Lang (1999), Brown and Ure (1969), and Rubin and Friendly (1986). Both rating scale values and rankings of these nouns were highly correlated with the statistics of the original studies. Data on 126 epithets differed from previous studies because they were constructed from only two parts of speech. The information resulting from this study allows easier experimental control in the selection of emotional stimuli, especially in lexical decision tasks and word identification tasks.Key words: emotional value, noun, epithet, positive-negative dimension.
著者
栗原 敦 (実践女子大学
出版者
日本イメージ心理学会
雑誌
イメージ心理学研究 (ISSN:13491903)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.27-30, 2022 (Released:2022-03-07)

凡常の目には並外れていて受け容れ難く,異常にも映ったままに語られたり,あるいは逆に天才として崇めたてられ勝ちでもある宮沢賢治だが,生涯を貫く作品創作行為(と社会的実践行動)は,近代ファンタジー概念の生成に重なる先駆的な試みに他ならなかったことを,その「ファンタジー」の使用例を踏まえつつ確認する。
著者
大島 丈志
出版者
日本イメージ心理学会
雑誌
イメージ心理学研究 (ISSN:13491903)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.15-20, 2020 (Released:2022-03-07)

宮沢賢治作品では異世界が現実世界に非常に近い所にある。その背景には作家の「空想傾向」の資質があると考えられる。作品では異世界に⼊ることで主体性に変容がおこり,「異世界」の変容の機序には「匂い」が深く関わると考えられる。そして「異世界」と現実世界との往還を冷徹に見つめる「詩人の眼」があり「異世界」と現実世界の往還をある程度,統制し得ていると考えられるのである。