- 著者
-
畠山 孝男
- 出版者
- 日本イメージ心理学会
- 雑誌
- イメージ心理学研究 (ISSN:13491903)
- 巻号頁・発行日
- vol.16, no.1, pp.1-37, 2019-10-31 (Released:2020-03-18)
- 参考文献数
- 284
本稿では自己報告型の主観的イメージテストによって測定されるイメージ能力が,認知的課題ないしは事態をどのように予測するかについて,生理,知覚,学習・記憶,想記,思考,社会的過程に分けて研究の展望を試み,それぞれの領域ないしテーマごとに概括を行いつつ筆者のコメントを付する。結果的に知覚と学習・記憶の領域が中心となる。イメージテストとの関係が豊富に示され,テストの予測力を支持する知見がかなり集積されている状況を見ることができる。鮮明性を問題とした研究が多いが,統御性,常用性(表象型),没入性も取り上げられ,それぞれのテストが予測力を発揮することが知られる。その中で,刺激入力時の特性,知覚との機能的等価性,情報量の多さ,イメージ生成の速さといったイメージの基本的特性は,鮮明性が中心的に担っている。学習・記憶との関係においては,材料の複雑度や処理困難度,意図学習か偶発学習か,イメージ方略以外の方略の適用可能性などが,決定的に重要な要因である。TVIC の測る統御性は,単なるイメージ特性を越えて,認知的・適応的柔軟性に及んでいる。主観的イメージテストが見せる様々な予測力は,イメージが単なる主観的現象にとどまらない実際的な機能を担っていることを明瞭に示していて,かつて展開された主観的イメージテストの妥当性をめぐる論争や,さらにはいわゆるイメージ論争に対して,一つの答えを提供していることが主張される。また,イメージは現象的にも機能的にも多面性を持っていて,主観的テストは認知過程における機能的違いをそれぞれのテストの特性に応じて反映していることが結論され,イメージ個人差の研究はイメージ能力の機序を問題とすべき段階であることが提案される。