著者
宮川 重義
雑誌
京都学園大学経済経営学部論集
巻号頁・発行日
no.8, pp.55-90, 2019-03-10

一昨年の2017年はミルトン・フリードマンがアメリカ経済学会会長講演でフィリップス曲線に関する記念すべき講演を実施してから丁度50年目の節目にあった。AEA会長講演は常に注目されるが、この講演ほどその後のマクロ経済学の発展に大きな影響力を及ぼしたものは他にない。そこで本稿ではこの機会にマクロ経済学の基本原理である、フィリップ曲線がそもそもどのような人物により発見され、その後どのような理論展開を見せ、フリードマンの主張は現在の経済学、とくにG.マンキューを中心とするニューケインジアン経済学の中にどのように生かされているかを理論、実証の両面より学説史的に考察するものである。
著者
宮川 重義
雑誌
京都学園大学経済経営学部論集
巻号頁・発行日
no.5, pp.31-52, 2017-11-30

本稿では知的巨人と称されるミルトン・フリードマンについて論じるが、彼のこれまでの著作を紹介したり、それを系統的に分析することではない。そのような仕事はジョン・バートンがいみじくも述べたように「(フリードマンの業績を評価することは)ナイアガラの滝の水量を小さな計量カップではかるに似たり」ということになり、到底本稿の及ぶ範囲ではない。フリードマン理論がどのようにアメリカの金融政策、経済の発展に関わってきたかを今日的観点より論じた。
著者
宮川 重義
雑誌
京都学園大学経済経営学部論集
巻号頁・発行日
no.6, pp.47-57, 2018-03-10

最近セントルイス連銀総裁ジェームズ・ブラード(James Bullard)は2008年以降の先進国の金融緩和政策、とくにゼロ金利政策の継続は1970年代にミルトン・フリードマンなどが警鐘をならした金利固定政策に他ならず、早晩制御し難しいインフレを引き起こすリスクが大であると主張している。もし、名目金利およびインフレが共に長期にわたり低率のまま長く留まるならば、金融政策の基本的考えを根本から変える必要がある。アメリカはこのブラードの主張を受け入れたか否かは定かではないが、現実のインフレがその目標値に達しない中金利引き上げに転じた。これに対して、わが国ではデフレ対策としてゼロ金利を長期にわたり継続している。このような状況を考える時、ブラードの主張は一考に値すると考え、ここにそのアイデアを紹介する。
著者
澤田 吉孝
雑誌
京都学園大学経済経営学部論集
巻号頁・発行日
no.6, pp.1-45, 2018-03-10

本稿の目的は、2008年9月のリーマン・ブラザーズの破綻後に実施された米国の量的金融緩和政策(QE政策)の有効性を定量的に分析することである。QE政策の第1弾(QE1)は2008年11月から2010年6月まで、第2弾(QE2)は2010年11月から2011年6月まで、第3弾(QE3)は2012年9月から2013年12月まで、そして2014年1月から同年10月まで緩和逓減が実施されている。米国のQE政策は20008年11月から6年間に渡って実施されてきたわけだが、この時期のデータのみを用いて回帰分析を行った場合には推計結果にバイアスを生じる可能性がある(小標本問題)。日本経済のQE政策を分析したHonda and Tachibana(2011)は、この「小標本問題」を回避するために、ダミー変数を用いて標本期間の拡大を行っている。そこで、われわれは彼らの方法を応用し、米国における金融政策の全体的な経済効果と、その波及経路を分析する。構造型ベクトル自己回帰モデル(SVARモデル)を用いた分析を通じて、次の3点が明らかとなった。第1に、QE政策は株価チャンネルを通じて生産高を増加させる。第2に、QE政策は、ボラティリティ指数で表される投資家の市場に対する不安感を緩和させ、株式に対するリスクテイクの向上につながる。第3に、生産高を増加させる効果は、QE3が最も大きく、次いでQE1が続く。つまり、これらの結果は、米国のQE政策が景気低迷を緩和する手段として有効であったことを示唆している。