- 著者
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河角 龍典
佐古 愛己
- 出版者
- 人文地理学会
- 雑誌
- 人文地理学会大会 研究発表要旨 2004年 人文地理学会大会 研究発表要旨
- 巻号頁・発行日
- pp.13, 2004 (Released:2004-11-12)
歴史的空間情報へのGIS(地理情報システム)の適用が、過去数年の間に急速に発展しつつある。古代都市に関する歴史GIS研究もその例外ではなく、考古学の分野からすでにいくつかの研究が実施されている。しかしながら、埋蔵文化財の発掘調査や文献史学から得られる膨大な古代都市にかかわる歴史的空間情報については、そのデータベースが十分に整備されていないために、古代都市研究へのGISの適用が遅れている。 本報告では、平安京に関連する歴史的空間情報のデジタルデータベースの構築とそれらへのGISの適用から様々な歴史地図を作成し、平安京の地形景観、土地利用景観の復原を試みた。京都に関する歴史学的、地理学的、考古学的な研究成果には、膨大な蓄積がある。これらの大量かつ精緻な研究成果は現在活字媒体で提供されているが、これをデジタル媒体でデータベース化することにより、さらに容易かつ有効な検索・利用が可能となる。本研究では、『兵範記』を記主平信範が存命した12世紀の京都を中心に、GISに利用可能なデータベースの構築を行った。本研究では、『平安京提要』1) や『平凡社日本歴史地名大系 京都市の地名』2) などから作成したデータベースの構築と、12世紀の中級貴族・実務官僚である平信範(たいらののぶのり、1112~87)の日記『兵範記』(『人車記』ともいう)のデータベースの構築を通して、具体的な検討を進めた。本研究では、古記録に表れる歴史的空間情報にGISを適用することにより歴史地図を作成し、平安京の景観復原を試みた。その結果以下のことが明らかになった。1)過去の景観について議論するためには、過去の地表面の復原が必要である。2)平安京の土地利用データベースとGISの結合によって、平安時代の土地利用の視覚化が可能になった。