著者
西岡 尚也
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

&nbsp;JAMSTEC(海洋研究開発機構)では「黒潮親潮ウオッチ」において毎週水曜日に黒潮流路予測を更新しネットに公開していて大変興味深い.過去の最大蛇行には、紀伊半島沖から鳥島までの蛇行みられる.ここでは沿岸地域との交流以外に、鳥島との交流(漂流)に視点を当てて考察したい.<br>&nbsp; 髙橋(2016)によれば江戸時代を通して数十年おきに、鳥島に漂流民が漂着した.日本列島沿岸部の交流に黒潮が果たした役割だけでなく、鳥島のような「孤島」との関係でも黒潮の役割を忘れてはいけない.<br> &nbsp;本発表では「①黒潮の蛇行」と「②鳥島漂流」さらに「③捕鯨船」に助けられたという偶然に注目し、黒潮と捕鯨文化そしてジョン万次郎の世界地図の意義まで拡大して考察を進めたい。これらは全て沿岸流「黒潮の存在」が結びつけた結果である.<br><br>
著者
西岡 尚也
出版者
人文地理学会
雑誌
人文地理学会大会 研究発表要旨 2004年 人文地理学会大会 研究発表要旨
巻号頁・発行日
pp.6, 2004 (Released:2004-11-12)

小中学校時代に形成された「地理的見方や考え方」は生涯にわたって世界認識形成や地域イメージを左右する。本発表ではこのような地理教育の役割を考え、特にアフリカに関わる記述に焦点を当て考察した。検討したのは2004年4月現在使用されている、小学校社会6年下5冊、中学校地理7冊の合計12冊の教科書である。 6年下でアフリカの国を取りあげ詳しく記述した教科書はない。かつ5冊の教科書に登場するアフリカに関わる写真は合計19枚しか存在しない。しかもそのうち14枚が、「飢えに苦しむ」「食糧配給を待つ」「難民」「紛争」「砂漠化」などのマイナス面を表している。私にはこれらで学ぶ子供たちに、アフリカ大陸の「悲惨さ」のみが誇張されて伝わり、誤った地域イメージが形成されると思えてならない。 明治初頭の福澤諭吉(1869)『世界国尽』は、異文化地域にランク付けし、欧米以外の文化地域を蔑視した世界観を「啓蒙」した。当時の福澤の視点は、欧米人の世界観を「模倣輸入」したもので、福澤一人の問題ではなかった。しかし今日の日本人の誤った世界認識形成は「日本の地理教育の責任」である。 開発教育では「多様性の尊重」を重視している。私たちはこの視点に学び、福澤以来の欧米以外の地域への偏見を改めなければならない。そのためにも地理教科書では「正しい世界認識」をめざした表記が重要になる。
著者
村上 呂里 那須 泉 西岡 尚也 善元 幸夫
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

ベトナムでは、教え込みから子ども中心主義への教育改革に取り組んでいる。本研究は、貧困問題や差別、学力問題や言語問題などの課題を抱える少数民族地域の小学校をフィールドとし、共通の問題を抱えた沖縄で培われた理論や実践に基づき、ベトナムの教育改革の質的向上に参加した。その成果については、日本語版『日本・ベトナム共同授業研究の歩み-教え込みから子ども中心主義へ』(明石書店、2015)とベトナム語版"Tu giao duc nhoi nhet sang giao duc tich cuc"(フォレスト社、2106)として刊行し、ベトナム側にも広く還元した。
著者
野間 晴雄 森 隆男 高橋 誠一 木庭 元晴 伊東 理 荒武 賢一朗 岡 絵理子 永瀬 克己 朴 賛弼 中俣 均 平井 松午 山田 誠 山元 貴継 西岡 尚也 矢嶋 巌 松井 幸一 于 亜 チャン アイン トゥアン グエン ティ ハータイン チャン ティ マイ・ホア 水田 憲志 吉田 雄介 水谷 彰伸 元田 茂光 安原 美帆 堀内 千加 斎藤 鮎子 舟越 寿尚 茶谷 まりえ 林 泰寛 後藤 さとみ 海老原 翔太
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

東アジア世界に位置する歴史的地域としての東シナ海,日本海,黄海・渤海・中国東北地方,広義の琉球・ベトナム,朝鮮半島の5つの部分地域として,環東シナ海,環日本海沿岸域の相互の交流,衝突,融合,分立などを広義の文化交渉の実体としてとらえる。それが表象された「かたち」である建築,集落,土地システム,技術体系,信仰や儀礼,食文化等を,地理学,民俗建築学,歴史学・民俗学の学際的研究組織で,総合的かつ複眼的に研究することをめざす。いずれも,双方向の交流の実体と,その立地や分布を規定する環境的な側面が歴史生態として明らかになった。今後はこの視点を適用した論集や地域誌の刊行をめざしたい。
著者
高橋 誠一 野間 晴雄 橋本 征治 平岡 昭利 西岡 尚也 筒井 由起乃 貝柄 徹 木庭 元晴
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、南海地域における歴史地理的実体を多角的に解明することを主目的としたものであった。従来の地理学分野からの琉球研究は、都市、集落、民俗、交易活動などを個別的に扱い、かつ沖縄や奄美の一地方を対象としたものが多かった。しかしこれらの個別事例の蓄積のみでは、東シナ海や南シナ海全域にわたる琉球の実体の把握が困難であったことは言うまでもない。そこで本研究においては、中国沿海州・台湾・ベトナム・フィリピン、沖縄・奄美における現地調査を実施し、都市・集落景観、伝統的地理学観の影響と変容、伝統的農作物栽培の伝播過程、物流と交易活動、食文化の比較、過去と現在の当該地域における地理学教育に見られる地域差などに関して、立体的な分析を行った。以上の研究によって、琉球が果たしてきた重層的な歴史的役割の実態を、かなりの程度まで明らかにできたと考える。これらの成果の一部は各研究者による個別論文のほかに、2007年に沖縄県立公文書館において開催した国際研究集会報告書などにおいても公刊済みである。また全体的な成果の一部を報告書としても提示した。しかし、本研究によって解明できた点は、当初の目的からすれば、やはりまだその一部を果たしたに過ぎないと言わざるを得ない。すなわち南海地域における歴史地理的諸事象の伝播過程やその変容については、かなり解明したとはいうものの、本研究の成果は単方向的な文化事象の伝播や影響の摘出に終始したとの反省がある。文化の交流や伝播は、長い歴史的過程の中では、多方向的に複雑に錯綜することによって新しい様相を生み出すということができる。それらを明らかにすることによって、本究で対象とした地域に関する理解を深化することを今後の課題としたい。