著者
嶋田 芳男
出版者
日本介護福祉学会
雑誌
介護福祉学 = Research journal of care and welfare (ISSN:13408178)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.27-35, 2015

地域巡回入浴サービスにかかわる福祉用具等を製造・販売するとともに,同入浴サービス従事者によるサービスの安全を確保するために研修部門と研究部門を社内に組織し,全国の地域巡回入浴サービス従事者を対象として多様な事業を展開してきたA社に焦点を当て,関係資料を収集,分析,評価した.また,それら事業の有益性を「人(従事者)」にかかわる取り組みと,「行政」の取り組みの2つの観点から検討するとともに,各種事業の実践方策を明らかにし,安全確保対策に臨む福祉用具等関係企業のひとつの形態を提示することを目的とした.この結果,安全確保に向けた各種事業は,それぞれ有益であり,5つの事業形態と6つの実践方策(企業の社会的責任の明確化,研究フィールドの提供,連携,活動の蓄積,知見の蓄積,情報発信)に基づいて展開されていた.そして,A社による実践は,他の福祉用具等を製造・販売する企業が,今後参考にすべきものと考えられた.
著者
加瀬 裕子 久松 信夫
出版者
日本介護福祉学会
雑誌
介護福祉学 = Research journal of care and welfare (ISSN:13408178)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.157-165, 2012

[背景]認知症高齢者の在宅生活維持のためには,認知症の行動・心理症状(behavioural and psychological symptoms of dementia;BPSD)に対するケアマネジメントが不可欠である,[目的]本研究は,BPSDに対し効果的であった介入・対応行動を特定し,認知症ケアマネジメントの要点を明らかにすることを目的としている.[方法]質問紙調査により収集した在宅介護のBPSD改善事例72を,多重コレスポンデンス分析を用いて分析した.[結果]BPSDの内容と効果的な介入・対応行動は,5群に分類された.第1群では,「昼夜逆転」「介護への抵抗」に,「服薬の調整と管理」が効果的であったことが示された.第2群では,「不穏な気分と行動」の改善に,「サービス利用の促進」「家族・介護者への教育」「本人が自分でできる課題の遂行」が関連していた.第3群には,「暴言」のみが含まれ,「課題を簡単なものにした」ことが介入行動として示唆された.第4群と第5群からは,主に妄想・幻覚・暴力にかかわるBPSD改善の関連が示されたが,特定の介入行動は示されなかった.[結論]明らかになった知見は,先行研究の結果と一致しているだけでなく,さらに特定のBPSDとの関連を示すことができた.改善事例の量的分析研究は認知症ケアマネジメントの開発に繋がる可能性が示唆された.