- 著者
-
加瀬 裕子
久松 信夫
- 出版者
- 日本介護福祉学会
- 雑誌
- 介護福祉学 = Research journal of care and welfare (ISSN:13408178)
- 巻号頁・発行日
- vol.19, no.2, pp.157-165, 2012
[背景]認知症高齢者の在宅生活維持のためには,認知症の行動・心理症状(behavioural and psychological symptoms of dementia;BPSD)に対するケアマネジメントが不可欠である,[目的]本研究は,BPSDに対し効果的であった介入・対応行動を特定し,認知症ケアマネジメントの要点を明らかにすることを目的としている.[方法]質問紙調査により収集した在宅介護のBPSD改善事例72を,多重コレスポンデンス分析を用いて分析した.[結果]BPSDの内容と効果的な介入・対応行動は,5群に分類された.第1群では,「昼夜逆転」「介護への抵抗」に,「服薬の調整と管理」が効果的であったことが示された.第2群では,「不穏な気分と行動」の改善に,「サービス利用の促進」「家族・介護者への教育」「本人が自分でできる課題の遂行」が関連していた.第3群には,「暴言」のみが含まれ,「課題を簡単なものにした」ことが介入行動として示唆された.第4群と第5群からは,主に妄想・幻覚・暴力にかかわるBPSD改善の関連が示されたが,特定の介入行動は示されなかった.[結論]明らかになった知見は,先行研究の結果と一致しているだけでなく,さらに特定のBPSDとの関連を示すことができた.改善事例の量的分析研究は認知症ケアマネジメントの開発に繋がる可能性が示唆された.