著者
村上 京子
出版者
名古屋大学留学生センター
雑誌
名古屋大学留学生センター紀要 (ISSN:13486616)
巻号頁・発行日
no.10, pp.13-22, 2012

日本の工場で働く日系ブラジル人など就労外国人には,在日期間が10年以上と長くなっても日本語の読み書きがほとんどできない人も多い。しかし,従来の日本語能力を測る試験は日本語によって出題されるため,質問文が読めない人は受験することができなかった。そこで,就労外国人が母語で受けられるように多言語で,また生活に密着した内容による日本語の読み書き能力判定試験問題を作成し,工場などで実施した。その結果,問題数が少ないにもかかわらず,信頼性は十分な水準にあることが確認された。また,マニュアルが整備されているため,テスターによる判定のゆれはほとんど見られなかった。判定結果は,工場内などの日本語教室でプレイスメント・テストとして活用されている。今後,外国人を雇っている企業や商工会議所,ハローワークなどとも連携し,処遇や就職の際の参考資料として活用していけるように拡充・普及を図っていきたい。
著者
齋藤 さくら 田中 京子 SAITO Sakura TANAKA Kyoko
出版者
名古屋大学留学生センター
雑誌
名古屋大学留学生センター紀要 (ISSN:13486616)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.29-42, 2006-10-16 (Released:2011-08-11)

本稿は,メキシコに1977年に設立された国際学校「日 本メキシコ学院」で行なわれている二文化教育が生徒たちに与えた影響について,在籍時の生徒たちの作文等,および修了後10年以上経た生徒たちへの質問紙調査を通して,縦断的に調査し考察した調査報告である。 調査の結果,二文化教育は在籍当時だけでなく,10年以上を経た現在まで影響しており,特にお互いの文化の長所とされる特徴を体得したと感じられている。日本人生徒たちにとっては,自由や平等,主体性,メキシコ人生徒たちにとっては,根気や礼儀,規律等である。同時に多角的視点から世界を見られる国際性を持った人間が育ちつつあると考えられる。効果的な言語教育についてなど,理想と現実の中で接点を見つけるべき課題も多くあり,今後国際学校の発展のために関係者の力を結集する必要がある。
著者
石川 クラウディア Ishikawa Claudia
出版者
名古屋大学留学生センター
雑誌
名古屋大学留学生センター紀要 (ISSN:13486616)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.5-26, 2006-10-16 (Released:2011-08-11)

Japan’s‘Plan to Accept 100,000 Foreign Students’ proved an endeavour of unprecedented dimensions. Prime Minister Yasuhiro Nakasone’s pledge in 1983 to increase the number of foreign students in Japan’s higher education sector tenfold within a span of twenty years not only had serious ramifications for universities, higher education policy, and the MEXT budget. The project was also to prove an immense challenge for the Ministry of Justice Immigration Bureau, with consequences continuing to be felt in education-oriented immigration control policy today. ‘Immigration for study purposes’ is attracting increasing attention amongst student-importing nations. Supported by primary materials, this paper intends to track and interpret developments in the little-explored field of education-seeking immigration in Japan. Analysing changes in the relevant MOJ laws, regulations and notifications, the paper seeks to uncover the impact of foreign student policy on immigration developments and outcomes. Meriting particular attention are the MOJ’s deregulatory drive of the late 1990s, which propelled foreign student numbers to their current levels, and the equally drastic U-turn to a policy of retrenchment in late 2003. Issues raised by the unprecedented influx of foreign students, including the jurisdictional blur between the Immigration Bureau and universities, the growing significance of foreign student labour, and a concern that foreign students may constitute a threat to the order of Japanese society are discussed. The paper concludes by a briefly deliberating on the legacy of the ‘Plan’.
著者
土井 康裕
出版者
名古屋大学留学生センター
雑誌
名古屋大学留学生センター紀要 (ISSN:13486616)
巻号頁・発行日
no.9, pp.5-12, 2011

本稿では,増加を続ける留学生と国際化を進める日本企業の間に存在する留学生採用のミスマッチを把握するために,愛知県が実施した調査を基に,留学生の労働市場について分析を行ったものである。特に,「企業側から見た留学生」,「日本人学生と留学生の就職活動」,「就職活動の前・後の留学生」という3つの視点から留学生労働市場の特徴を明示した。今回の調査から,国際的に優秀な人材の活用を日本国内の企業に促すことを政策的に進めるには,各大学や地域の特性に基づいた留学生専用の就職支援を行う必要性があることが明らかになった。大学等でも留学生の就職支援対策に追われている中,愛知県地域振興部国際課が行っている「留学生インターンシップ事業」や「留学生就職フェア」等は,非常に大きな支援となっている。ただし,今後さらに拡大する留学生数を考えると,大学等と連携した地域としての支援体制構築が必要だと考えられる。