著者
笠井 雅直
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSYU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.109-126, 2015-10-31

トヨタ自動車工業の創業者であった豊田喜一郎は,それまでの豊田の事業が基盤とした綿業中心からの転換を図るべく自動車事業に参入し,挙母町に広大な用地を確保し,自動車の大量生産の体制を構築するのであるが,その一方で,航空機に関する試行も継続していた。トヨタ自動車工業は戦時下,陸軍からの要請により川崎航空機工業と共同で東海飛行機を設立し航空機分野に参入するが,その生産は企業整備の対象となっていた旧中央紡績の工場を活用したものであり,トヨタ自動車工業の挙母工場では自動車生産に集中していた。豊田喜一郎の志向は民需用の航空機にあった。
著者
名城 邦夫
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSYU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.1-88, 2015-10-31

ヨーロッパ貨幣史を国家貨幣の分裂,計算貨幣の発展の視角から分析する。カール大帝は支配の単位として国家貨幣・銀貨デナリウスを導入した。その後,貨幣高権は分裂し,ヨーロッパに無数の貨幣流通圏が成立する。国王や領邦諸侯さらには都市当局によって支えられた特権的市場経済・指令慣習経済が成立し,その内部経済として北イタリア商人によって貨幣高権を超える商業ネットワークと信用決済システムが形成された。 16世紀を境に,ネーデルランドで商品取引所と為替取引所が設立され,ネーデルランドを中心に北西ヨーロッパで自由な市場経済圏が成立することになった。この市場経済の決済はアムステルダム為替銀行の計算貨幣バンコ・ギルダーによって行われた。こうして,北西ヨーロッパ市場圏の国際商品は銀行貨幣バンコ・ギルッダー建のもと自由に需要と供給によって価格が決定した。同時に,独立によって領土と国民が確定したオランダ共和国において卸売価格が決定し,最終的に共和国の小売価格がバンコ・ギルダーの価値に基づいて決定された。つまり,資本主義世界経済の決済貨幣・バンコ・ギルダーは共和国の国内価格を支配する為替貨幣となる。
著者
玉川 貴子
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSYU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.177-186, 2015-10-31

本論文では,戦後から1964年に東京で開催されたオリンピックまでの時期までを対象とし,首都におけるインフラ整備のなかで問題となったし尿処理に現れる排除の視線と都市空間への取り込みについて社会学的にアプローチする。し尿処理については,その消化槽の建設用地や予算が問題とされたり,下水道未整備について言及されるが,そうした諸問題にはし尿に対する人々の視線,二元行政化による複雑さも関係していると考えられる。
著者
大原 寛史
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSYU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.183-200, 2015-07-31

「民法の一部を改正する法律案要綱」は,意思無能力者がした法律行為を無効とする準則を明文で規定する。この準則は,判例および学説において異論なく認められてきたものである。しかしながら,この準則を明文で規定する以上,行為能力理論および制度との関係性,とりわけ「日常生活に関する行為」との関係性の問題については,より詳細に検討しておく必要がある。この問題について,ドイツにおいては,2002年に成年の行為無能力者による「日常生活に関する行為」については一定の要件のもとで例外的に有効とする規定が新設されたものの,当該規定をめぐって様々な観点から議論がなされている。本稿は,この議論を素材として上記問題を検討することにより,民法改正により生じる問題点,とりわけ成年の意思無能力者による「日常生活に関する行為」の効力についての解釈における一視座を提示し,今後の課題を明らかにすることを目的とするものである。
著者
安藤 りか
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSYU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.133-147, 2015-07-31

本論では,取り組み開始から十数年となった大学におけるキャリア教育に対して,近年提出されている種々の批判を整理し,それらの批判の対象となっているキャリア教育の現実との照合・確認をおこない,そこに見られる課題の検討を試みた。その結果,第1に,批判の中核である「心理主義的傾向」と「対象と範囲の無限定性」については,批判が妥当であることを確認した。第2に,「対象と範囲の無限定性」の問題が,キャリアcareerの語義に起因する教育内容の無限定性の問題にとどまらず,教員の専門性の問題とも深く関わっていることを見出した。最後に今後のキャリア研究の課題を示した。
著者
児島 完二
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSYU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.45-57, 2016-01-31

急速なスマートフォン普及率の上昇からBYOD時代における高等教育機関での情報リテラシーのあり方を論考する。ネット世代の大学生は知的生産のツールであるICTを使いこなせるのかという問題意識で,3年間にわって大学生を対象にパソコンのキーボード操作に関する調査を行った。新入生のタイピング能力を測定し,その結果を示すとともに,アンケート3項目との相関を分析した。たしかに極めて能力の高い学生が増えている反面,ビジネスパーソンとして仕事に不安を抱える下位層が多く存在することを示した。