著者
笠井 雅直
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集. 社会科学篇 = Journal of Nagoya Gakuin University (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.109-126, 2015

トヨタ自動車工業の創業者であった豊田喜一郎は,それまでの豊田の事業が基盤とした綿業中心からの転換を図るべく自動車事業に参入し,挙母町に広大な用地を確保し,自動車の大量生産の体制を構築するのであるが,その一方で,航空機に関する試行も継続していた。トヨタ自動車工業は戦時下,陸軍からの要請により川崎航空機工業と共同で東海飛行機を設立し航空機分野に参入するが,その生産は企業整備の対象となっていた旧中央紡績の工場を活用したものであり,トヨタ自動車工業の挙母工場では自動車生産に集中していた。豊田喜一郎の志向は民需用の航空機にあった。
著者
梶浦 恭子
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集. 社会科学篇 = Journal of Nagoya Gakuin University (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.171-181, 2018

戸外の地面や草地の上を散歩するなど,森の自然を体験する遊びに親子で通う乳幼児(0―3歳)は,どのような遊びの世界を展開するのだろうか。 本研究は,乳幼児が,(1)どのように自然の環境(世界)に出会っていくのか,(2)何に触れて関わり,体験し遊び始めるのかを,乳幼児の手(指)や身体の行動(行為・動作)場面の観察から行為・動作の過程を探る。 自然体験に関わる保護者である大人(乳幼児には大切な存在)と乳幼児との関わり,自然物に触れて遊ぶ乳幼児はどのような動きを表すのか,関わるのか,動きに着目して事例を作成した。事例を整理した結果,①大人に抱っこされる行為から,②大人に絡みまとわる行為,③横並びで手つなぎする動作,以上3つの自然の環境に関わる行為・動作について,本研究では言及する。
著者
國原 幸一朗
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集. 社会科学篇 = Journal of Nagoya Gakuin University (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.197-222, 2018

本稿では,名古屋市会会議録に記された議員の質問や執行機関の答弁をもとに,地域の防災まちづくりを考える授業を構想した。一般質問から議員の,代表質問から会派の防災に対する見方や考え方を理解することができる。また,質問・答弁内容を分類し,経年的変化をみることにより,論点がどう変化したか,防災政策として何が進み,何が課題かを読み取ることもできる。本稿の授業では、水害・津波・原発の側面から防災を捉え,住民意識調査の結果,防災計画,GISによる地域分析と照合することにより,議会での発言を意義づけ,防災まちづくりがどのように進められようとしているかを考えさせようとした。
著者
岩出 和也 山口 翔
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集. 社会科学篇 = Journal of Nagoya Gakuin University (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.197-210, 2017

日本のアニメーション産業は,2015年には,市場規模が1兆2,542億円に達するなど,年々拡大を続けている。しかし,市場構造の変化などにより,制作現場には疲弊しており,今後の健全な成長を考える上では課題も多い。 この先,日本的なアニメーション表現の多様性を確保しつつ,世界市場に向けてコンテンツを制作・発信可能な形で制作現場の業務フローを改善していく上では,基本的な制作フローの情報化を業界全体として推し進める必要がある。その上で,課題や改善点についての知見を個別に蓄積するのではなく,業界全体として共有する枠組みも重要になると考えられる。本論文では,アニメーション産業全体の市場構成と整理,制作現場がかかえる課題と情報化による事業効率化の可能性を検討する。
著者
安藤 りか
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集. 社会科学篇 = Journal of Nagoya Gakuin University (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.133-147, 2015

本論では,取り組み開始から十数年となった大学におけるキャリア教育に対して,近年提出されている種々の批判を整理し,それらの批判の対象となっているキャリア教育の現実との照合・確認をおこない,そこに見られる課題の検討を試みた。その結果,第1に,批判の中核である「心理主義的傾向」と「対象と範囲の無限定性」については,批判が妥当であることを確認した。第2に,「対象と範囲の無限定性」の問題が,キャリアcareerの語義に起因する教育内容の無限定性の問題にとどまらず,教員の専門性の問題とも深く関わっていることを見出した。最後に今後のキャリア研究の課題を示した。