著者
志賀 市子 Shiga Ichiko
出版者
神奈川大学 国際常民文化研究機構
雑誌
国際常民文化研究叢書3 -東アジアの民具・物質文化からみた比較文化史-=International Center for Folk Culture Studies Monographs 3 -Comparative Cultural History from the Perspective of East Asian Mingu and Material Culture-
巻号頁・発行日
pp.151-167, 2013-03-01

本稿は2000年代の台湾において一種のブームとなっているQ版神仙のキャラクター商品に注目し、ブームの背景の分析を通して、台湾における信仰文化の商品化と消費をめぐる社会状況についての考察を試みるものである。Q版神仙のQは、英語のcute(キュート、かわいい)の諧音(発音をもじったもの)であり、Q版神仙とは、日本の漫画やアニメのキャラクターに見られるような「かわいい」形象に変身させた神仙キャラクターを指す。近年台湾の寺廟では、より多くの参拝客を呼びよせるために廟内に土産物ショップを設け、Q版神仙の公仔(フィギュア)やその携帯ストラップ、帽子、Tシャツなど、さまざまな商品を販売するところが増えてきている。本稿ではまずQ版神仙ブームがいつ頃から、どのような背景のもとに興ってきたのかを、一つはコンビニエンスストア競争が巻き起こしたブームから、もう一つは台湾政府が推し進める文化創意産業計画との関連から論じた。次に台湾中部の媽祖廟を事例として、Q版媽祖のキャラクター商品がどのように開発され、販売されているのか、その実態を明らかにした。最後に台中県の著名な媽祖廟、大甲鎮欄宮を事例として、近年の進香活動に見る新たな展開や信者層の変化に注目し、Q版神仙商品の売れ行きとの関連性について検討した。また結論部分では、台湾のローカルな文化とグローバルな形象をミックスさせたQ版神仙は、21世紀の台湾における新しい文化創出のひとつであると指摘した。
著者
小熊 誠 Oguma Makoto
出版者
神奈川大学 国際常民文化研究機構
雑誌
国際常民文化研究叢書3 -東アジアの民具・物質文化からみた比較文化史-=International Center for Folk Culture Studies Monographs 3 -Comparative Cultural History from the Perspective of East Asian Mingu and Material Culture-
巻号頁・発行日
pp.43-61, 2013-03-01

沖縄の亀甲墓は、近世福建の亀甲墓の墓型が導入されて成立したことは従来指摘されてきた。また、そういう経緯があるにもかかわらず、沖縄の亀甲墓は福建の亀甲墓とまったく同じではなく、異なる点があることも指摘されてきた。しかしながら、具体的な墓の構造や意匠などに注目して、両者を比較する研究は多くはなかった。それを本格的に行ったのは、平敷令治であった。その研究を基本として、ウーシ(臼)といわれる琉球・沖縄の亀甲墓の特徴がどのように創造されたのかを再検討する。 まず、琉球家譜に描かれた近世福州における亀甲墓と福州で実地調査した墓調査資料をもとに、福州における亀甲墓の歴史的展開とその特徴を亀甲墓に施された石獅子や仙桃、螺古などの意匠を中心に考察する。次に、近世琉球における亀甲墓について、写真や墓図をもとに、琉球士族、有力村役人層である久米島上江洲家の事例を整理する。さらに近代以降の亀甲墓について、津堅島の事例を検討する。そこから、ウーシがいつから、どの墓につけられるようになり、どのように展開したかを分析する。 福州における亀甲墓の歴史的展開と琉球・沖縄における亀甲墓の歴史的展開を対比することによって、ウーシは福州の意匠の影響ではなく、むしろ琉球第二尚氏王家の王墓である玉陵の円筒の影響があることを類推する。また、福州では中国的な風水や富貴願望の慣習から亀甲墓の意匠が展開したことを示す。 本稿の新しい方法論として、福州における歴史的展開と琉球・沖縄における歴史的展開を対比するという時間軸と空間軸と組み合わせた立体的な比較研究を提示した。そして、福建と琉球・沖縄の亀甲墓は、コンバージェンス(収斂)だとした平敷令治の指摘に対して、本稿では福州の石獅子などの意匠と琉球・沖縄のウーシという意匠の具体的な物質文化の対比によって、その意味とその違いを検討した。
著者
志賀 市子 Shiga Ichiko
出版者
神奈川大学 国際常民文化研究機構
雑誌
国際常民文化研究叢書3 -東アジアの民具・物質文化からみた比較文化史-=International Center for Folk Culture Studies Monographs 3 -Comparative Cultural History from the Perspective of East Asian Mingu and Material Culture-
巻号頁・発行日
pp.151-167, 2013-03-01

本稿は2000年代の台湾において一種のブームとなっているQ版神仙のキャラクター商品に注目し、ブームの背景の分析を通して、台湾における信仰文化の商品化と消費をめぐる社会状況についての考察を試みるものである。Q版神仙のQは、英語のcute(キュート、かわいい)の諧音(発音をもじったもの)であり、Q版神仙とは、日本の漫画やアニメのキャラクターに見られるような「かわいい」形象に変身させた神仙キャラクターを指す。近年台湾の寺廟では、より多くの参拝客を呼びよせるために廟内に土産物ショップを設け、Q版神仙の公仔(フィギュア)やその携帯ストラップ、帽子、Tシャツなど、さまざまな商品を販売するところが増えてきている。本稿ではまずQ版神仙ブームがいつ頃から、どのような背景のもとに興ってきたのかを、一つはコンビニエンスストア競争が巻き起こしたブームから、もう一つは台湾政府が推し進める文化創意産業計画との関連から論じた。次に台湾中部の媽祖廟を事例として、Q版媽祖のキャラクター商品がどのように開発され、販売されているのか、その実態を明らかにした。最後に台中県の著名な媽祖廟、大甲鎮欄宮を事例として、近年の進香活動に見る新たな展開や信者層の変化に注目し、Q版神仙商品の売れ行きとの関連性について検討した。また結論部分では、台湾のローカルな文化とグローバルな形象をミックスさせたQ版神仙は、21世紀の台湾における新しい文化創出のひとつであると指摘した。