著者
小熊 誠 田名 真之 上原 靜 周 星 藩 宏立 何 彬 萩原 左人 周 星 何 彬 潘 宏立 蔡 文高 萩原 左人
出版者
沖縄国際大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

沖縄と福建の民俗文化の諸相について、多角的な比較研究が行われた。両地域の民俗文化は、その歴史的背景と地理的状況を考慮すると、沖縄における中国あるいは福建文化の受容と変容が一つの重要な視点となる。文化移動の歴史的背景を明確にしつつ、両地域の社会構造や信仰体系と対比して、家譜と族譜、門中と宗族、洗骨改葬、祖先祭祀儀礼、建築儀礼と風水、樹木信仰、琉球瓦と中国瓦などについて比較研究が行われた。
著者
小熊 誠 Oguma Makoto
出版者
神奈川大学 国際常民文化研究機構
雑誌
国際常民文化研究叢書3 -東アジアの民具・物質文化からみた比較文化史-=International Center for Folk Culture Studies Monographs 3 -Comparative Cultural History from the Perspective of East Asian Mingu and Material Culture-
巻号頁・発行日
pp.43-61, 2013-03-01

沖縄の亀甲墓は、近世福建の亀甲墓の墓型が導入されて成立したことは従来指摘されてきた。また、そういう経緯があるにもかかわらず、沖縄の亀甲墓は福建の亀甲墓とまったく同じではなく、異なる点があることも指摘されてきた。しかしながら、具体的な墓の構造や意匠などに注目して、両者を比較する研究は多くはなかった。それを本格的に行ったのは、平敷令治であった。その研究を基本として、ウーシ(臼)といわれる琉球・沖縄の亀甲墓の特徴がどのように創造されたのかを再検討する。 まず、琉球家譜に描かれた近世福州における亀甲墓と福州で実地調査した墓調査資料をもとに、福州における亀甲墓の歴史的展開とその特徴を亀甲墓に施された石獅子や仙桃、螺古などの意匠を中心に考察する。次に、近世琉球における亀甲墓について、写真や墓図をもとに、琉球士族、有力村役人層である久米島上江洲家の事例を整理する。さらに近代以降の亀甲墓について、津堅島の事例を検討する。そこから、ウーシがいつから、どの墓につけられるようになり、どのように展開したかを分析する。 福州における亀甲墓の歴史的展開と琉球・沖縄における亀甲墓の歴史的展開を対比することによって、ウーシは福州の意匠の影響ではなく、むしろ琉球第二尚氏王家の王墓である玉陵の円筒の影響があることを類推する。また、福州では中国的な風水や富貴願望の慣習から亀甲墓の意匠が展開したことを示す。 本稿の新しい方法論として、福州における歴史的展開と琉球・沖縄における歴史的展開を対比するという時間軸と空間軸と組み合わせた立体的な比較研究を提示した。そして、福建と琉球・沖縄の亀甲墓は、コンバージェンス(収斂)だとした平敷令治の指摘に対して、本稿では福州の石獅子などの意匠と琉球・沖縄のウーシという意匠の具体的な物質文化の対比によって、その意味とその違いを検討した。
著者
佐野 賢治 森 武麿 小熊 誠 内田 青蔵 安室 知 泉水 英計 森 幸一
出版者
神奈川大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

日系南米移民の生活世界の形成において本国の文化はどのような役割を果たし、また、新たな環境のもとでどのような変化を遂げたのか。本研究は、このような問いに対し、日本民俗学が東アジアで蓄積してきた知見と調査法をもって答える可能性を探求したものである。具体的な研究活動は、移民資料の現状確認に赴いたブラジル国サンパウロ州での2度の現地調査である。諸機関が収蔵する生活用具の保管状態を検分して登録記録を収集し、また、日系入植地を巡見して初期の入植者家屋や工場、宗教施設を見学しつつ古老の記憶の聞き書きをすすめた。その結果、本格的な調査研究を展開する適地としてレジストロ植民地が見出され、次期事業が策定された。
著者
村上 興匡 鷲見 定信 村上 興匡 武田 道生 小熊 誠 佐藤 壮広 小熊 誠 武田 道生 佐藤 壮広
出版者
大正大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

沖縄から本土への移住者の文化習慣の変化と、沖縄で進行しつつある本土的な文化慣習が普及する変化(「本土化」)とを比較することで、現在の沖縄で起きている変化は、単に本土の文化慣習が沖縄に移入しているわけではなく、それに先だって、まず本土へ移住した沖縄系移住者が、自らの文化慣習を本土に適応させて新たな形を作り出すということがあり(「沖縄化」)、それが再び沖縄に移入されるという形で、文化変容が起きていることが明らかになった。
著者
小熊 誠
出版者
神奈川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

近年、日系企業の中国進出に伴って、中国に在住する日本人の数が増加している。中国在住の日本人は、企業活動の他に県人会を組織して、さまざまな活動やネットワークの形成を図っている。その中で、沖縄県人会は、若者を中心とした個人的ネットワークによって活動が展開され、他県人会の組織が年功序列的であり、形式的であることと比べて異なる特徴が見られる。この違いは、沖縄人が自分の意志で就職先を中国に求めることや元来友人などヨコの関係を重視する性格をもつことなどによると考えられる。
著者
福田 アジオ 周 正良 朱 秋楓 白 庚勝 巴莫曲布む 劉 鉄梁 周 星 陶 立ふぁん 張 紫晨 橋本 裕之 福原 敏男 小熊 誠 曽 士才 矢放 昭文 佐野 賢治 小林 忠雄 岩井 宏實 CHAN Rohen PAMO Ropumu 巴莫 曲布女莫 陶 立〓
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1989

平成計年〜3年度にわたり中国江南地方において実施した本調査研究は当初の計画どおりすべて実施され、予定した研究目的に達することができた。江蘇省常熟市近郊の農村地帯、特に白茆郷を対象とした揚子江下流域のクリ-クに広がる中国でも典型的な稲作農村の民俗社会の実態とその伝承を記録化することができ、また浙江省の金華市および蘭渓市や麗水市における稲作の民俗社会を調査することが出来た。特に浙江省では中国少数民族の一つであるシェ族の村、山根村の民俗事象に触れることができ、多大な成果を得ることが出来た。2年度は前年度の調査実績を踏まえ、調査地を浙江省に絞り、特に蘭渓市殿山郷姚村、麗水市山根村、同堰頭村の3か所を重点的に調査した。ここでは研究分担者は各自の調査項目に従って、内容に踏み込み伝承事例や現状に関するデ-タを相当量収集することができた。また、この年度には中国側研究分担者8名を日本に招聘し、農村民俗の比較のために日中合同の農村調査を、千葉県佐倉市および沖縄県読谷村の村落を調査地に選び実施した。特に沖縄本島では琉球時代に中国文化が入り込み、民俗事象のなかにもその残存形態が見られることなどが確認され、多大な成果をあげることが出来た。3年度は報告書作成年度にあたり、前年度に決めた執筆要項にもとずき各自が原稿作成したが、内容等が不備がありまた事実確認の必要性が生じたことを踏まえ、研究代表者1名と分担者3名が派遣もしくは任意に参加し、補充調査を実施した。対象地域は前年度と同じく蘭渓市殿山郷姚村、麗水市山根村の2か村である。ここでは正確な村地図の作成をはじめ文書資料の確認など、補充すべき内容の項目について、それを充たすことが出来た。さらに、年度内報告書の作成をめざし報告書原稿を早急に集め、中国側研究分担者の代表である北京師範大学の張紫晨教授を日本に招聘し、綿密な編集打合せを行った。以上の調査経過を踏まえ、その成果を取りまとめた結果、次のような点が明らかとなった。(1)村落社会関係に関する調査結果として、中国の革命以前の村落の状況と解放後の変容過程に関して、個人の家レベルないし旧村落社会および村政府の仕組みや制度の実態について、また村が経営する郷鎮企業の現状についても記録し、同じく家族組織とそれを象徴する祖先崇拝、基制について等が記録された。特に基制については沖縄の基形態がこの地方のものと類似していること、そして沖縄には中国南方民俗の特徴である風水思想と干支重視の傾向があり、豚肉と先祖祭祀が結びついていることなどから、中国東南沿海地方の文化との共通性を見出し、日中比較研究として多大な成果をあげることが出来た。(2)人生儀礼および他界観といった分野では、誕生儀礼に関して樟樹信仰が注目され、これは樹木に木霊を認め、地ー天を考える南方的要素と樹木を依り代と見立て、天ー地への拝天的な北方的要素が融合した形と見られる。また成人儀礼ではシェ族に伝わる学師儀礼の実態や伝承が詳細に記録され、さらに貴州省のヤオ族との比較を含めた研究成果がまとめられた。特に中国古代の成人式の原始的機能が検出され、また先祖祭祀との関わりや道教的要素の浸透など貴重なデ-タが集積された。その他、中国民俗の色彩表徴の事例などの記録も出来た。(3)民間信仰および農耕儀礼として、年中行事による季節観念と農業生産との関係、農耕社会における祭祀の心理的要因や農耕に関する歌謡によって表出された季節的意味などに焦点をあて、ここではさらに日本の沖縄との比較を含めて分析された。さらに建築儀礼に関しても詳細に報告され、沖縄の石敢当を対象に中国との比較研究もまとめられた。(4)口承文芸および民俗芸能については稲作起源神話の伝承例を初めとし、江南地方の方言分布とその特徴ならびに文化的影響の問題について、さらに金華市と沖縄の闘牛行事の比較研究などに多大な成果を得ることが出来た。(これらは報告書として刊行予定)
著者
小熊 誠
出版者
沖縄国際大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

沖縄における民俗文化の中で、中国文化の影響を受けていると思われるものは少なくない。本研究では、風水思想と門中制度をとりあげ、その伝播と受容について調査研究することを目的とした。風水思想は、近世琉球において、琉球王府が中国から導入し、その政策に積極的に応用したことが、文献研究を通して明らかにされた。とくに、名宰相といわれた蔡恩が、沖縄本島北部の山林政策や村落経営に風水思想を取りいれていたことは、多くの文献に記されている。また、近世から近代初頭にかけて、村落が王府に願い出て村落風水を看てもらう事例もいくつか発見された。さらに、村落が、久米系士族出身の風水師を個別に頼んで、村落風水のみならず、個人の家屋風水をも看てもらっていた。こうして、沖縄における風水思想は、琉球王府の政治思想からしだいに一般の知識へと伝播していったものと予想される。現在でも、沖縄では家屋の建築や墓の造成の際に風水を看る慣習があるし、街角に多く見られる石敢當も風水の影響である。今日、沖縄の風水は、「気」の思想に欠けている点で中国の風水と大きく異なる。この点は、今後の研究課題となろう。門中制度については、やはり近世初期に、琉球王府が中国の宗族制度を模範として士族の間に取り入れたことから発展したと考えられる。その端緒は、身分制を強化するために、士族に家譜を作成させたことから始まる。家譜は、中国の族譜に倣って、父系出自に基づいて記載された。さらに、それが集団化し、共通祖先の祖先祭祀、門中墓の形成などを伴なって、門中が形成されていった。しかし、門中には中国姓を使用するが、中国における姓の原理までは導入しておらず、中国では禁止されている同姓不婚の原則が、沖縄では厳格に忌避されていたわけではなかった。中国文化の受容と伝播の研究には、歴史的視点と原理の比較が必要であり、この点が比較民俗学の視点となろう。
著者
福田 アジオ 津田 良樹 安室 知 徳丸 亜木 菅 豊 中野 泰 安室 知 津田 良樹 菅 豊 徳丸 亜木 中野 泰 小熊 誠 向 雲駒 劉 暁路 馮 莉 陳 志勤 王 悟 崔 成志
出版者
神奈川大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

改革開放が進むなかで、打破すべき封建制の残津から保護すべき伝統文化へと、民俗文化の評価も大きく変わってきた状況下において、漸江省の西北部山間の2村落を対象に詳細な民俗誌を作成し、それを通して文化政策とその影響および地域の対応を実証的に検討した。4年間の調査によって、古鎮保護、非物質文化遺産保護という二つの動きが地域に与えている大きな影響、またその政策実施に対応するかたちで展開した地域の観光開発その他の動向と問題点を明らかにすることができた。