著者
加藤 幸信 カトウ ユキノブ Yukinobu Kato
雑誌
宮崎県立看護大学研究紀要 = Journal of Miyazaki Prefectural Nursing University
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.6-17, 2005-03

人権思想の確立にあたっては,ジョン・ロックやジャン・ジャック・ルソーといった哲学者が大きく貢献した。しかし,彼らの基盤となる自然法思想は,社会的存在である人間を個人に還元してしまうものであり,当時の社会的状況に対するアンチ・テーゼの面が強いと言える。したがって,その時代的社会における大きな有効性を有した反面,理論的には必ずしも正しいとは言えないのである。人権論の基盤となるべきものは,彼らよりも,むしろドイツの哲学者ヘーゲルに存在する。ヘーゲルはかつて国家主義者として語られることが多く,人権と結びつけて説かれることは少なかった。しかし,彼の説いたことを理論的に読み返せばそうではないことがわかる。彼は,観念論者であり,精神の本質を自由だとして『歴史哲学』において,世界史は自由の意識の発展だと説いた。これは,人間の本質は自由だということである。ここに我々は人権論の基盤を求めることができる。ただ,ヘーゲルは東洋の世界から歴史を説き,ルソーやヘーゲルに先行するドイツの哲学者カントが説こうとした人類の原始状態,人類の起源に関しては説いていない。この点を補い,唯物論の立場から読み返せば,ヘーゲルの理論は人権論の基盤となりうるものである。
著者
若松由佳子/川原瑞代/渡辺久美/島内千恵子/菅沼ひろ子/串間秀子 ワカマツユカコ/カワハラミズヨ/ワタナベクミ/シマウチチエコ/スガヌマヒロコ/クシマヒデコ WAKAMASTUYukako/KAWAHARAMizuyo/WATANABEKumi/SHIMAUCHIChieko/SUGANUMAHiroko/KUSHIMAHideko
雑誌
宮崎県立看護大学研究紀要 = Journal of Miyazaki Prefectural Nursing University
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.92-97, 2000-12

近年の児の栄養方法の推移をみると母乳栄養の割合が上昇してきているが, 半数以上は哺乳びんを用いる育児が行われている。そこで, 今回哺乳びんの消毒方法がどのように行われているかを明らかにすることを目的に調査を行った。すなわち, 乳児を養育している母親108名を対象として, 哺乳びんの消毒方法の実施の実態とそれらに対する認識について調査した。その結果, 生後1ヶ月の時点での哺乳びん使用者は55名で, 哺乳びんの消毒方法は, 「次亜塩素酸ナトリウムでの消毒」が25名, 「煮沸消毒」が22名, 次いで「電子レンジでの消毒」が9名であった。消毒方法を選択するのに影響を受けた情報源では「テレビ・新聞等の広告」と「出産した施設での専門家の指導」が同数の14名, 次いで「家族」が13名でほぼ同数程度と多く, その他には「育児書」や「雑誌」などが情報源になっていた。消毒方法別にみると, 次亜塩素酸ナトリウム消毒実施者は, 「テレビ・新聞などの広告」が多く, 煮沸消毒実施者は, 「出産した施設での指導」が多かった。消毒方法についての認識は, 「清潔なものを使いたい」という人が多い一方で, 「手間がかかる」「いつまで必要か」「このような消毒や洗浄で子どもに安全か疑問」などの疑問も同時にみられた。更に, 哺乳びんの消毒を必要と考える期間についても, 6ヶ月から12ヶ月と答えた人が約60%を占めたが, 6ヶ月以下もみられ一定していなかった。これらの結果から, 哺乳びんの消毒については, 方法の選択や実施法やその時期に戸惑いがみられることがわかった。従って, 乳児の免疫学的及び, 細菌学的特徴も考慮に入れた消毒方法についての検討と情報提供が必要であり, 母親と指導する側の認識についても考慮しながら, 有効な保健指導を行う必要があることが示唆された。