- 著者
-
大塚 泰正
- 出版者
- 広島大学大学院教育学研究科心理学講座
- 雑誌
- 広島大学心理学研究 = Hiroshima psychological research (ISSN:13471619)
- 巻号頁・発行日
- no.13, pp.243-249, 2013
本研究は,公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会が指定する臨床心理士養成大学院に対してアンケート調査を行い,産業領域に関する臨床心理士養成の現状を明らかにすることを目的とした。48校から得られた回答をもとに分析を行った結果,産業臨床を専門とする専任教員は27.1%の大学院に配属されていることが明らかになった。産業臨床に関する講義科目は25.0%,実習科目は4.2%,課外実習は10.4%,セミナ一等の開催は8.3%,研究所・研究会などの設置は4.2%の大学院に認められた。一方,大学院生については,22.9%の大学院に産業臨床に関する研究テーマを持つ大学院生が存在し,8.3%の大学院に調査時点において何らかの産業臨床に関する活動を行っている大学院生が存在した。また,過去5年間のうちに産業領域に就職した大学院生は38名存在したが,その多くは大学院生時代に産業臨床に関する講義や実習などを受講することなく,現場に配属されている可能性が示唆された。産業臨床に関する専門家を養成するには,今後さらに大学院における教育プログラムを充実させる必要があるといえる。