著者
小林 亮太 重松 潤 宮谷 真人 中尾 敬
出版者
日本感情心理学会
雑誌
感情心理学研究 (ISSN:18828817)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.67-72, 2020-03-31 (Released:2020-03-31)
参考文献数
35

Previous studies have reported that cognitive reappraisal is related to decentering and mental health. However, there are two limitations in the current literature. First, it is unclear whether distraction facilitates decentering. Second, anxiety is the only index that has been used to assess mental health. Therefore, we examined whether cognitive reappraisal and distraction enhance decentering, which in turn improves mental health. Three hundred and eighty-seven university students answered questionnaires that assessed cognitive reappraisal, distraction, and decentering. Additionally, we measured depression, subjective happiness, and life satisfaction as mental health indicators. Our results confirmed that cognitive reappraisal and distraction influence mental health. In addition, decentering mediated the effect of cognitive reappraisal and distraction on mental health. These results suggest that distraction and cognitive reappraisal enhance decentering, which in turn, improves mental health.
著者
熊田 真宙 吉田 弘司 橋本 優花里 澤田 梢 丸石 正治 宮谷 真人
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.56-62, 2011 (Released:2011-08-29)
参考文献数
17
被引用文献数
4 4

Elderly people have lower ability for recognizing facial emotions than younger people. Previous studies showed that older adults had difficulty in recognizing anger, sadness and fear, but there were no consistent results for happiness, surprise and disgust. Most of these studies used a small number of stimuli, and tabulated the number of correct responses for facial expressions. These characteristics of the task might be the source of the discrepancy in the findings. The present study used a task which measures participants' discrimination thresholds for six basic emotions using psychophysical measurement methods. The results showed that the thresholds for elderly participants (74.8±6.5 yrs) were significantly higher than for younger participants (20.1±1.6 yrs) for sadness, surprise, anger, disgust and fear. There was no significant difference for happiness. Since the task that we developed was sufficiently sensitive, it is a useful tool for assessing individuals' ability to perceive emotion.
著者
楊 琬璐 宮谷 真人
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第13回大会
巻号頁・発行日
pp.155, 2015 (Released:2015-10-21)

音楽と色彩の構成要素を系統的に変化させ,それぞれ単独,あるいはその組み合わせが気分や印象に及ぼす影響や,組み合わせの相応しさを決定する要因について調べた。その結果,長調でテンポの速い曲とvivid toneは覚醒度を上げ,長調でテンポの遅い曲とdull toneは眠気を生じさせた。また,長調でテンポの遅い曲とvivid toneの暖色系,pale toneの全色はポジティブな心理的効果を促進させ,短調でテンポの遅い曲とdull tone全色はネガティブな気分を喚起した。音楽のみ条件と音楽に相応しい色の組み合わせに比べ,音楽に相応しくないと感じられる色を同時に呈示すると,ネガティブな気分が増強された。各音楽に相応しい色彩の組み合わせの結果から,音楽と色彩の組み合わせの相応しさを決める要因として,各音楽や色彩に対する好み,喚起される感情の共通性,および印象評価の共通性の3つが挙げられる。
著者
宮城 円 中尾 敬 宮谷 真人
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第13回大会
巻号頁・発行日
pp.142, 2015 (Released:2015-10-21)

同程度に好ましいアイテムから好ましい方を選択すると,自らが選んだものの選好は増加し,選ばなかったものの選好は減少する。この現象は“選択による選好の変化”と呼ばれ,近年自らが選択したものの選択率を上げるといった強化学習によって説明できることが示唆されている。抑うつ傾向者では,ギャンブル課題等において強化学習による価値の学習が生じにくくなることが知られているが,選択による選好の変化について抑うつ傾向との関連は明らかになっていない。本研究は選択による選好の変化と抑うつ傾向との関連についてBlind choice paradigmを用いて検討した。その結果,抑うつ傾向者ほど選ばなかったものの選好が減少しにくいことが明らかとなった。一方,選んだものの選好の変化と抑うつ傾向との関連はみられなかった。このことから,選んだものと選ばなかったものの選好の変化は異なる過程により生じている可能性が示唆された。
著者
尾形 明子 宮谷 真人 中尾 敬 島津 明人 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.33-42, 2008-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究は、不安と自己関連処理との関連について検討することを目的とした。60人の実験参加者は不安条件、ノイズ条件、負荷なし条件に割り当てられ、呈示された中性語に対して、自己関連づけ課題、他者関連づけ課題、意味課題の3つの方向づけ課題を行い、その後自由再生課題を行った。実験中、不安条件では不安を喚起させ、ノイズ条件では80dBのホワイトノイズを呈示した。その結果、不安条件では他の条件に比べて自己関連づけ課題の再生率が低くなっており、不安は自己関連づけ課題の再生成績にのみ影響を及ぼしている可能性が示された。
著者
徳永 智子 宮谷 真人
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.53-61, 2010-08-30 (Released:2010-12-08)
参考文献数
43
被引用文献数
2 2

他者の視線の方向へと注意が捕捉される効果は,手がかりが閾下呈示された場合にも生じることが報告されている.また,視線注意効果が恐怖表情によって影響を受けることも知られている.本研究は,表情による視線注意効果への影響が,刺激に対する意識的気づきがない場合でも生じるかどうかを検討した.視線を手がかりに用いた空間的手がかり課題において,恐怖表情と中性表情の視線を17 msという短時間呈示することで,刺激に対する意識的気づきを操作し,注意効果が生じるかどうかを調べた.実験1では,恐怖表情と中性表情で同程度の視線注意効果が生じ,表情の効果はなかった.これは用いたマスク刺激が参加者に,顔が呈示されているという構えを生じさせたためであったと考え,刺激を変えて実験2を行った.その結果,恐怖表情と中性表情とで視線による注意効果は異なり,視線による注意効果への表情の影響は,意識的気づきを必要としない自動的な過程によって生じることが示された.
著者
光戸 利奈 錦織 翼 辰川 和美 橋本 優花里 宮谷 真人
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.18-27, 2019-03-31 (Released:2020-04-03)
参考文献数
30

言語流暢性課題の得点がアルツハイマー病 (以下 AD) や軽度認知障害 (以下 MCI) の評価に役立つ指標であることがすでに報告されている。そして, 言語流暢性課題では反応の質的な分析を行うことで, 語彙検索機能や自己モニタリング機能について検討できる可能性がある。また, 語彙検索機能については, 検索の方略という視点から検討されているが, 英語話者を対象とした先行研究で扱われている方略は日本語話者にとって一般的とはいえないため, 日本語話者特有の方略に基づいて分析する必要がある。そこで本研究では, 日本語話者の AD と MCI の語彙検索機能と自己モニタリング機能の特徴を明らかにすることを目的とした。動物の名前を挙げる意味課題と「か」からはじまる語を挙げる文字課題を, AD と MCI, そして健常高齢者 (以下 NC) に実施した。語彙検索機能の評価には日本語話者特有の方略を考慮した上でクラスター数とスイッチ数を用い, 自己モニタリング機能の評価には, 産生語の重複エラー率と検査者への質問の有無の割合を用いた。その結果, 意味課題において AD では NC と比べてクラスター数とスイッチ数が少なく, 重複エラー率が高かったことから, 語彙検索機能と自己モニタリング機能の低下が示唆された。また, MCI では NC と比べてクラスター数とスイッチ数は少なかったものの, 重複エラー率には違いが示されなかったことから, 自己モニタリング機能に先行して語彙検索機能が障害される可能性が示唆された。
著者
宮谷 真人 衛藤 萌 原 梢恵 梨和 ひとみ 徳永 智子
出版者
広島大学大学院教育学研究科
雑誌
広島大学大学院教育学研究科紀要. 第三部, 教育人間科学関連領域 (ISSN:13465562)
巻号頁・発行日
no.59, pp.75-81, 2010-12-24

This study investigated whether the event-related brain potentials (ERPs) in go/no-go tasks were modulated by the processing of facial expressions. The ERPs were recorded from 13 participants performing emotional (with happy and angry faces) and nonemotional (with letter stimuli) go/no-go tasks. Results showed that go responses to facial expressions were slower than those to letter stimuli. The no-go-trial-ERPs between 220-320ms after the stimulus onset were more negative than the go-trial-ERPs, but in the smile-go/anger-no-go task, this difference reduced in amplitude in the latency range of 220-260ms. Possible differences of no-go potentials between emotional and non-emotional go/no-go tasks were indicated.
著者
宮谷 真人 中條 和光 白濱 愛実 迫 健介
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.4, pp.1-10, 2005-03-28

改正道交法が施行(2004年11月1日)され,運転中の携帯電話の使用が罰則の対象となった.一方,手に持たなくても通話できるハンズフリー装置は,規制の対象からはずされている.本研究は,通話に手を用いないことが,運転時の通話の危険性を多少とも減少させるかどうかを検討した.大学生16名が実験に参加した.主課題は,画面のさまざまな位置に呈示される視覚刺激に対して6種類の反応の一つを行うことであった.副課題として,左手でヘッドフォンを耳にあてる,イヤフォンから聞こえてくる数字列を逆唱する(イヤフォン条件),ヘッドフォンを耳にあて聞こえてくる数字列を逆唱する(携帯条件),の3つがあり,各条件における反応時間および眼球運動を,副課題を行わない条件と比較した.その結果,イヤフォン条件と携帯条件で同程度の反応遅延が生じた.したがって,ハンズフリー装置を用いても,運転時の通話の危険性は全く減少しないことがわかった.また,反応時間と眼球運動の妨害効果の比較から,視線行動が影響を受けないからといって,運転パフォーマンスも影響を受けないとはいえないことが示された.
著者
橋本 淳也 渡邊 洋一 宮谷 真人 中尾 敬
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.18, pp.127-134, 2019-03-31

Previous studies have reported that positive autobiographical memories are involuntarily retrieved on a daily basis and often accompany mood changes. Previous studies have used subjective report methods to measure the impact of involuntary retrieval on mood. However, subjective report methods are known to be easily distorted by social desirability and demand characteristics. To avoid this problem, we applied the measurement of implicit mood and examined the impact of involuntary positive memory on mood. Sixty-four participants participated in the experiment and 48 participants were included in the analyses. Participants carried out an easy task in which the retrieval cue was presented, to induce an involuntary positive memory. Participants were also asked to rate the mood of nonsense words in order to measure implicit mood before and after the task. The results demonstrated that the involuntary positive memory retrieval increased positive mood in participants who exhibited lower positive implicit mood before the involuntary memory retrieval. We experimentally demonstrated that involuntarily retrieved positive memories can improve implicit mood.
著者
宮谷 真人 中尾 美月 山本 文枝 岩木 信喜 藤本 里奈
出版者
広島大学
雑誌
広島大学大学院教育学研究科紀要. 第三部, 教育人間科学関連領域 (ISSN:13465562)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.301-308, 2002-02-28

In this article, the influence of different reference electrodes on the scalp distribution of event-related potentials (ERPs) was evaluated. The search-related negativity (SN) is one of negative ERP component which varies with memory and display load in a visual search task. The amplitude and topography of SN were sensitive to the selection of reference site. The effects of memory and display load at frontal and temporal sites were larger when ERPs were referred to tip of nose compared with linked-ear reference. In contrast, the attenuation of N400 due to semantic relation between word pairs was almost invariable with use of different reference sites. These results suggest that optimal reference electrode selection depends on what component of ERPs is a research target, and has to be evaluated not only theoretically but also empirically.
著者
田中 紗枝子 宮谷 真人
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 = Hiroshima psychological research (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.13, pp.25-33, 2013

テストに記憶を促進させる効果があることが古くから知られている。従来は,正しく解答できた場合にのみ効果があるとされていたが,近年になって誤情報にも正情報の学習を促進する役割りがあることが明らかになっており,これは"プレテスト効果"と呼ばれている。プレテスト効果が個人の特性によりどのような影響を受けるかについて検討された研究はまだないが,その他の記憶に関わる研究の結果から,ワーキングメモリなどの個人特性との関連が考えられる。本研究では,今後個人差要因を検討するのに適切な刺激語リスト,および実験の手続き等を決定するため,先行研究と同様の手続きにしたがい,日本語刺激を用いても同様のプレテスト効果が確認できるかどうかを検討した。その結果,有意なプレテスト効果が確認でき,またディストラクタ課題として行った暗算課題の成績とNo-Pretest群の再生成績の間に正の相関があった。このことから,本研究で用いた刺激と手続きがプレテスト効果を検討するのに適切なものであることが確認できた。また,プレテスト効果とワーキングメモリ容量の間に関連がある可能性が示唆された。
著者
中尾 敬 光元 麻世 片山 香 宮谷 真人
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.7, pp.11-18, 2007

本研究では、職業選択時に記録される競合関連陰性電位(conflict related negativity, CRN)様成分が実際に競合を反映しているのかどうかを検討した。職業選択課題(例: どちらの職に就きますか? 「ダンサー、化学者」)、競合あり課題(例:有意味語はどちらですか? 「大学教授、大営教援」)、競合なし課題(例: 有意味語はどちらですか? 「たこ焼き屋、*****」)時の脳波を記録し、 CRN様成分を比較した。その結果、全ての条件においてCRN様成分が認められ、職業選択課題時の振幅が競合なし課題時の振幅よりも大きかった。また、CRN様成分の電源推定を行ったところ、職業選択課題時と競合あり課題時のCRN様成分の電源は共に補足運動野であった。このことから、職業選択時のCRN様成分は補足運動野における競合の解消過程を反映している可能性が示唆された。今後の研究で必要な条件設定について考察した。