著者
森永 茉里 赤井 秀行 坂井 武司
出版者
九州ルーテル学院大学人文学部心理臨床学科
雑誌
心理・教育・福祉研究:紀要論文集
巻号頁・発行日
no.22, pp.63-74, 2023-03-31

今日の小学校教育では,通常の学級における特別な教育的支援の重要性が高まっている。しかし,小学校教員の特別支援学校教諭免許状の取得率は10%程度であり,特別支援教育の専門性を背景とした指導や支援の実現に課題があると考えられる。そこで本研究では,小学校第1学年の学習内容である加法と減法に焦点をあて,通常学級で使用される教科書と知的障害者用教科書の比較を通じ,通常学級での算数科指導における支援への示唆を得ることを目的とする。加法と減法の学習手順に即し,①場面の把握,②立式,③演算の3つの観点からそれぞれの教科書を比較及び分析した結果,①操作によって場面を動的に捉えさせる指導,②学習をスモールステップで進める指導,③演算手順の中の視点の移り変わりに配慮した指導,という3つの指導上の工夫が,通常学級においても学習支援として機能する ことが明らかになった。
著者
滝本 多恵 和田 由美子
出版者
九州ルーテル学院大学人文学部心理臨床学科
雑誌
心理・教育・福祉研究:紀要論文集
巻号頁・発行日
no.22, pp.37-51, 2023-03-31

精神科看護師における幸福感とワーク・ライフ・バランス(WLB)の関係について検討するために,精神科看護師81名を対象に無記名のweb 調査を実施した。協調的幸福感の得点には,性別やその他の属性による有意差は見られなかった。協調的幸福感の得点を目的変数,WLBの5つの下位尺度の得点を説明変数とするステップワイズ法による重回帰分析を属性別に実施した結果,性別の分析では,男性では「仕事のやりがい・職場の支援」のみが,女性では「家庭での過ごし方・家庭の支援」「仕事 のやりがい・職場の支援」の両方が正の説明変数として選択された。また,同居の子の有無では,いずれも「家庭での過ごし方・家庭の支援」が正の説明変数として選択され,同居の子なしの者では2つ目の変数として「仕事のやりがい・職場の支援」が,同居の子ありの者では「時間の調整」が選択された。精神科看護師の幸福感にWLBが正の影響を与えていたことから,属性差および属性差の背景を踏まえた適切なWLBの支援策をとることにより,精神科看護師の幸福感が向上する可能性が示唆された。