著者
塚原 修一
出版者
関西国際大学教育総合研究所
雑誌
教育総合研究叢書 = Research Institute for Education, Kansai University of International Studies (ISSN:18829937)
巻号頁・発行日
no.16, pp.155-168, 2023-03-31

日本の2010年代になされた官邸主導の政策形成のうち,高等教育分野にかかわる事例として教育のいわゆる無償化政策と研究開発政策をとりあげた。無償化は高校,幼児教育,高等教育(修学支援新制度)の順に,それぞれ民主党,公明党,自民党が主導して実現した。非正規雇用が雇用者の4割弱となるなかで,教育費を社会的に負担するこれまでの方式が機能しがたくなり,公費による人材の再生産に着手されたとみえる。研究開発政策はイノベーション政策への展開を民主党が構想し,自民党が実現して内閣府が強化された。現在は10兆円の基金による大学支援が準備されている。革新的なイノベーションをめざすハイリスクな研究開発事業には失敗の可能性があり,それを避けようとして革新性を低めれば事業の意味が乏しくなる。そのことを直視した政策展開が望まれる。
著者
平井 正朗
出版者
関西国際大学教育総合研究所
雑誌
教育総合研究叢書 = Research Institute for Education, Kansai University of International Studies (ISSN:18829937)
巻号頁・発行日
no.16, pp.201-211, 2023-03-31

学習指導要領の改訂に伴い,学校組織運営のあり方が見直され,「チーム学校」の名のもとに,カリキュラム・マネジメントの重要性がクローズ・アップされている。背景にあるのは少子化による学校の経営基盤の維持である。筆者は私立中学校高等学校における学校経営,教育委員会における教育行政に従事し,カリキュラム・マネジメントを実践,一定の成果を得ることができた。私学という独自の風土の中で最善の方法となる特殊解を求めるのと同時に,どの学校でも通用する最適解をカリキュラム・マネジメントという視点で継続的に研究している。本稿では,その体系化に関する研究の一環として,現任校である神戸山手女子中学校・高等学校における事例を紹介しつつ,さらなる理論構築を試みる。
著者
河内山 真理 有本 純
出版者
関西国際大学教育総合研究所
雑誌
教育総合研究叢書 = Research Institute for Education, Kansai University of International Studies (ISSN:18829937)
巻号頁・発行日
no.15, pp.123-133, 2022-03-31

本研究では,発音を表記する方法について,英和辞典や発音辞典,英英辞典や音声学の専門書,中学校検定教科書等を,母音を中心に,比較・分析し,どのような表記方法を用いているか明らかにした。日本・イギリス・アメリカの表記方法の差とそれによる影響について,英語音声学・英語教育・学習者の立場から考察を行った。また,表記の不統一は指導者にも学習者にも混乱を生み出す。高校までは統一表記を導入し,代表的な英音と米音等の発音については,電子辞書の音声に格納するのが望ましい。学習者に対しては教育の現場での適切な指導や,特に小学校教育における正しい音声と文字・綴りを結びつける指導が望まれる。